「新しい挑戦」は自分の得たものを分け与えるとき
私たちが、「自分のために働いている」時間は、修行の段階で例えるならば、自分自身が教えを得ようと必死に励んでいるときでしょう。将来の飛躍を考えるのであれば、自己修練は不可欠であり、必ず必要な時間です。
しかし、「新しい挑戦」を考えているのであれば、次の「自分の得たものを分け与える」段階に近づいているタイミングなのかもしれません。
私たちが日常で手にするあらゆる物やサービスは他者の仕事の成果物であり、あなたが日々打ち込んでいる仕事も、なんらかの形で他者に届けられます。それらは直接ではないにせよ、人の時間を受け取り、自分自身もまた時間を提供しています。
目の前の仕事があまりに大変だと、どうしても視野が狭まってしまいますが、働くことで私たちはお互いに他者との時間を分け合いつながりを作りつづけているのです。
他者を利することは自分自身の利を高めることになる
そこで、「新しく挑戦する」ときだからこそ、考えたいのが「利他」の道です。ここでいう「利他」は自己犠牲とは少し異なります。もし、自己犠牲にだけ重きをおいていたのであれば、「月とウサギ」の物語は、我が身を捧げて他者の空腹を満たしたお話になっていたでしょう。
仏教(特に大乗仏教)では「利他」を「自利」とセットで考えることがあります。他を利することにより自分自身もまた利を高めていくこと。他者に対しての慈しみの心による行動が、自らの心を育むことになるという「自利利他円満」の精神です。