トヨタの関連会社が周辺に数多く立地する愛知県知立市の知立団地では、そこで働く外国人が全世帯の6割以上を占めている。南米出身者が多数暮らす団地では、他では考えられない生活トラブルが起きるという。芝園団地自治会事務局長の岡崎広樹さんの著書『外国人集住団地』(扶桑社新書)より一部を紹介しよう――。
団地
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トヨタ関連会社に勤める外国人が多く暮らす知立団地

日本を代表する企業の一つであるトヨタ自動車のある愛知県には、豊田市を中心に関連企業が多数ある。そこで働く外国人労働者も多く、彼らの住む集住地域も複数にわたる。

愛知県豊田市にある保見団地が外国人集住地域として全国的にも有名である。1990年に改正入管法が施行されると、南米出身の日系人労働者が来日してきた。保見団地の空き部屋が埋まり始めると、豊田市に隣接する知立市にあるUR知立団地にも日系人が増え始めたという。保見団地や知立団地の外国人住民は、トヨタ系列の工場で働く派遣労働に従事する人が多いようだ。

「知立市をとりまく、刈谷市、安城市、大府市ね。トヨタの子会社や関連会社があるんだけど、その真ん中に知立団地が置かれていて」

と、知立団地に住む髙笠原晴美(80代)は話す。知立団地はトヨタ系列の工場からアクセスが良く、企業にとって都合の良い場所だという。敷地の中には、派遣会社ごとに暗黙の停留所まであるそうで、毎日、その停留所までお迎えの車がやって来るという。

愛知県名古屋市から名鉄名古屋本線に乗って、静岡方面に30分も揺られると、知立団地の最寄り駅である名鉄牛田駅に到着する。牛田駅から知立団地には、徒歩10分程度である。

ここ30年で外国人住民の数が10人→約2500人に

2021年11月、知立団地に向かった筆者が歩いていると、小さな店が目に入ってきた。看板は外国語で書かれている。外国人集住地域を訪問すると、近隣には外国人経営の店舗が必ずと言っていいほどある。

知立団地商店街の大きな看板が見えると、その先に知立団地がある。

知立団地の入居開始は1966年、総戸数は1960戸、全部で75号棟まであり、マッチ箱のような5階建ての住宅が並んでいた。

髙笠原が知立団地に引っ越してきたのは1976年頃だった。

「ここは緑がとても多くて、それを伐採しながら建てたところ。残っている緑もあるし、環境的にも良い所だからって言われて申し込んだのよ」

そして、1980年代初頭には知立団地自治会の役員になり、自治会長も長年務めてきた。また、知立市の市議会議員となり、知立団地の課題などにも対処してきたという。

1990年までは、知立団地の外国人住民は10人にも満たなかったが、その約10年後、外国人住民は1000人を超えた。この急増理由について、髙笠原はこう言った。

「保見団地の戸数はそんなに多くないですね。保見に外国人が住めなくなると、知立団地にも入ってきた」

2022年4月1日現在、UR知立団地の人口は、日本人住民が1391人、外国人住民が2467人と、人口の60パーセント以上が外国人住民である。芝園団地(埼玉県)よりも、外国人が集住する団地の存在に驚きを隠せない。