髙笠原の記憶では、「燃えるごみ」と「燃えないごみ」という日本語だけの表記だった。これでは、外国人住民が分別できなくても仕方ない。ごみの分別は機能せず、コンテナ付近の住民は、夏場の悪臭に困ってしまった。また、年末年始になると、ごみがコンテナから溢れ出てしまい、その片づけだけでも大変だったという。

ごみの散乱を防ぐためにあえてコンテナを撤去

そこで、コンテナは撤去して、可燃ごみは各棟の入り口付近に集めるようにした。野ざらしの場所をごみ捨て場にして、ごみは散乱しないのだろうか。

「五つ程度の棟が共同で1か所に捨てると、今日はごみを出していい日じゃないのに捨てちゃうとかしても責任を感じないでしょ。間違ったとしても許してちょうだいよと。だけど、自分の棟の下であれば、いい加減なことはできない。一つの階段で10軒しかないですからね」

ごみが入り口付近に散乱すれば、ごみを捨てた本人だって不快に感じるはずだ。この対策によって無責任に捨てる人が減り、可燃ごみの問題はだいぶ改善したという。

もう一つの課題は不燃ごみである。現在は鉄枠のステーションが設置され、不燃ごみは毎週水曜日の午後3時から8時、毎週木曜日の朝6時から8時に捨てることが可能だが、以前は、時間外に捨ててしまう人や不燃ごみ以外も捨ててしまう人がいたという。

さらに、そのステーションは、「立ち番員」が管理している。「立ち番員」は自治会員が行っている。多少の報酬が支払われており、その一部は自治会費から捻出しているという。当然、自治会員だけがステーションを利用可能である。

知立市の条例では、自治会が不燃ごみに責任を負っているので、この管理方法は規則に合わせた形だという。では、会員以外が捨てに来たら、どうするのだろうか。

「断ってもいいんです。ここに住んでいる人が『立ち番員』をやっているので、あなた何棟だよね、とか上手に言ってね。今度、自治会に行ってカード買ってらっしゃいと」

「立ち番員」から地域の分別方法を学ぶ

「立ち番員」は自治会費納入も依頼するそうだ。それでも会員証を提示しない人は断ってしまうらしい。だが、これでは不燃ごみが捨てられずに困る人も出てくるのではないだろうか。

自治会費は年間2400円だった。1カ月であれば、わずか200円である。その金額を負担せず、わざわざ会社で捨てる人がいるという。そういう人には、

岡崎広樹『外国人集住団地』(扶桑社新書)
岡崎広樹『外国人集住団地』(扶桑社新書)

「会社は『家庭ごみを持ってこないで』と言わないの?」

と聞くという。

「5回に1回くらいは言われるんでしょうから、間が悪そうにして帰っていきます」

不法投棄対策の側面もあるという。

「立ち番員制度を採り入れる前は、出勤時の車にいろんなものを積んで、ごみ捨て場にポーン、ポーンと捨てていく人がいました。それを取り締まりたかったのもあるんです」

見張り役がいれば不法投棄は難しくなるだろう。「立ち番員」は、分別の間違いも指摘しているという。この方法であれば、国籍を問わず新しい住民は、地域の分別方法を学ぶ機会にもなる。地域住民が激しく入れ替わる場所では、効果的な不燃物の管理方法かもしれない。

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