窓やベランダから赤ちゃんの使用済みおむつが…
外国人住民が増えていくと、やはり、生活トラブルが目につき始めた。
「外国の人が増え始めた時のことですね、トラブルがしょっちゅうあったのは。たとえば、赤ちゃんのおむつ。普通は生ごみと一緒に袋の中に入れて捨てるわけですけれども、窓やベランダからポイッポイッと。あれっ、何が降ってきたの、ということなんですよ」
ごみが上階から降ってきたという話は芝園団地でも聞いたことがある。知立団地には南米出身者、芝園団地には中国出身者が多く住んでいる。出身国は異なるのに、同様の問題が起きるのは不思議に思えた。
また、深夜の騒音問題については、特に知立団地に住む外国人住民は朝から勤める人、昼から勤める人、夜勤の人もいて、勤務時間がバラバラになることによる生活騒音の問題があった。
勤務時間がバラバラであれば、生活時間帯もバラバラになり、掃除、洗濯、食事などの時間帯もバラバラになる。その違いが生活騒音の問題を生む。しかも、知立団地の人口構成も高齢者の日本人と若者の外国人だった。
「外国の人はね、赤ちゃんを抱っこして、夜中でも、自分の休憩時間や遊びの時間であれば連れてきます。子どもは甲高い声なもんだから、幼稚園くらいの子がしゃべっている声も伝わってくる。赤ちゃんが泣けば、『えーっ。こんな時間にどこなの』って感じで」
深夜2時に外国人住民がバレーボールを始める
生活時間帯だけではなく、世代までが異なっているため、子どもに関連する騒音問題が起きやすくなる。
深夜2時頃に外国人住民が公園でバレーボールをしてうるさいといった苦情はいまだにあるという。これも勤務時間がバラバラだから起きることだろう。
こうした生活トラブル解決への取り組みは極めて地道だった。ここでは、髙笠原に聞いた一つの例を紹介したい。
ある日の夜11時頃、髙笠原の電話が鳴った。
「上の部屋から水が漏れてくるんだけど、どうにかしてもらえないかねえ」
日本人住民からのSOSである。髙笠原は昼夜を問わずに生活トラブルの相談を受けていた。「夜でも走ります」と、何時であっても現場に直行するという。昔ならいざ知らず、現在は80代である。5階ともなれば上るだけで息が切れてしまう。
「ハアッ、ハアッて、ちょっと休ませて……。こういう風になります(笑)」
息を整えて部屋のインターホンを鳴らすと、外国人住民が出てくる。髙笠原がトラブルの説明を始めるが、当然、日本語が通じない場合もある。こういう時はどうやって意思疎通を図るのか。