退院後の後悔
2016年12月初旬。義母は退院すると、きれいになった離れを目にし、佐倉さんに「ありがとう!」と言った。ところが2017年1月。年末年始をはさみ、お正月ムードが落ち着いた頃、義母は離れに一人ぼっちになり寂しくなったのか、事件は起きた。
「あなたのお義母さん、おかしくない?」
それは佐倉さんの母親からの電話で発覚した。佐倉さんと長女は、近所の公民館主催の絵画サークルに定期的に参加していたが、そのサークルに参加している時間に、義母がわざわざ佐倉さんの母親に電話して「あなたのところの嫁さんと孫娘さん、隣の市の風俗店でいかがわしい商売に従事しているわよ」と、伝えたというのだ。
母親は、「『そんなことするはずがない』と言っても、全然信じてくれなくて、涙が出たわ。それで怖くなって、電話機の着信拒否ボタンを押した……」と。
佐倉さんは愕然とした。
「昔から思い込みが激しくておかしな人だったけど、ここまで根拠のないひどい妄言はありませんでした……」
母親から電話で事情を聞いた後、佐倉さんが離れにいる義母のところへ向かうと、なんと義母もこちらへ向かって来ていた。
「私たちが風俗店で働いているって、何ですか!」
佐倉さんが問いかけた瞬間、鬼のような形相の義母が発したのは、「もう2度と行かへんか!」という恫喝のような言葉。義母は、「近所の人が(風俗で働いていると)言いに来た」というが、近所の人とは誰のことかは言わない。
「たぶん義母の妄想だから、近所の人というのは実在しないのだと思いました。私はすっかり目が覚め、『これまでも暴言を何度も許してきたが、これは病気だ。まともじゃない。夫が帰宅したら対応を考えなければならない』と思いました」
佐倉さんは母屋に帰ると、義母がこちらの家に入れないように鍵をかけた。すると義母は「開けろ!」と叫び、玄関や勝手口などを叩いて回った。
母親によると、佐倉さんが結婚してから約27年間、義母は事あるごとに、「娘をどんな育て方をしたんや!」「娘の育て方が悪い」という電話をかけ続けていたらしい。そのことを佐倉さんが知ったら、離婚すると言いかねないと思い、ずっと黙っていたという。佐倉さんは母親に申し訳ない気持ちになった。