アイヌを先住民族と認めることの意義

アイヌの問題に関して、私はこれまで36本の質問主意書を政府に提出しました。アイヌが日本の先住民族であると、日本政府に認めさせたのも私です。2008年、福田康夫内閣のときでした。6月6日に私が提出した質問主意書に対し、6月17日の閣議決定で「アイヌ民族は日本列島北部周辺、とりわけ北海道における先住民族」と政府は初めて認めたのです。

それまで日本政府は、アイヌを先住民族として認めませんでした。国がきちんと認めることで、アイヌの人たちが民族としての名誉や尊厳、誇りを少しでも取り戻すことができる。私はそう考えたのですが、政治家として誇れる仕事のひとつになりました。

2007年に、「先住民族の権利に関する国連宣言」が国連の第1回人権理事会で採択され、翌年の国連総会で決議されていました。先住民族に対する関心と権利を尊重する風潮が世界的に高まっていたことが、追い風になったといえます。

ロシアのプーチン大統領は2018年12月11日、ロシア人権評議会において「クリール諸島(北方四島を含む千島列島)などに住んでいたアイヌ民族を、ロシアの先住民族に認定する」という提案に対して支持を表明しました。

北方四島において、アイヌが先住民族であることは事実です。もしアイヌがロシアの先住民族であるなら、四島は歴史的にもロシア固有の領土というロジックができあがります。しかし、アイヌは日本の先住民族であり、そのロジックは成り立たないのです。

1904年に撮影されたアイヌの家族
1904年に撮影されたアイヌの家族

スガノマスクが人気に

2019年には、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(略称:アイヌ施策推進法)」が施行されました。アイヌ民族文化財団が北海道白老(しらおい)町で運営する施設「ウポポイ(民族共生象徴空間)」の開設も、このとき決まりました。

「ウポポイ」は、アイヌ語で「大勢で歌う」という意味です。オープンは2020年7月で、開業式典には、私が出席を求めていた菅義偉官房長官(当時)が出席されました。政府の「アイヌ政策推進会議」は官房長官が座長であり、菅さんは、アイヌ施策推進法の制定とウポポイの開業に尽力されたからです。記者会見で菅さんは、アイヌ独特の文様が刺繍されたマスクをつけていました。「登別アシリの会」というアイヌ民族の刺繍サークルが贈った手作りマスクです。これが「スガノマスク」と呼ばれて人気になって、注文が殺到しました。

オープンからちょうど2年がたったウポポイですが、コロナ禍の直撃を受け、出鼻をくじかれてしまいました。年間100万人の来館者を見込んでいたのに、10万人にとどまっているのが現状です。