日本のエネルギー事情が窮地に立つ恐れ

ロシア軍のウクライナ侵攻が長期化する中、日露関係も険悪化してきた。ロシア側は対露制裁を進める日本への報復を強化し、7日に北方領土周辺での安全操業協定の履行停止を発表。5月には、中露の戦略爆撃機による日本周辺共同飛行も行われた。

クレムリン壁際にある「無名戦士の墓」で行われたドイツのソ連侵攻から81年目を迎える「追悼と悲しみの日」で、花輪贈呈式に出席するプーチン大統領=2022年6月22日、モスクワ
写真=SPUTNIK/時事通信フォト
クレムリン壁際にある「無名戦士の墓」で行われたドイツのソ連侵攻から81年目を迎える「追悼と悲しみの日」で、花輪贈呈式に出席するプーチン大統領=2022年6月22日、モスクワ

外交筋によれば、ロシア政府は現在、対日政策の見直し作業を行っており、日露関係縮小を決める可能性が強い。その場合、ロシアは日本への報復制裁を拡大し、日露関係は一段と悪化しそうだ。

ロシアでは、新たな制裁として、海産物の対日禁輸や、液化天然ガス(LNG)を生産するサハリン2からの日本排除も検討されている。サハリン2への制裁があれば、日本のエネルギー事情が一段と逼迫ひっぱくしよう。

日本人の80%以上が制裁に賛成しているが…

岸田文雄政権はG7(主要7カ国)と連携し、ロシアに対して矢継ぎ早に対露制裁を発動した。すでに300以上の個人・団体の資産を凍結しており、プーチン大統領や2人の娘も対象とした。銀行や金融機関の資産も凍結し、主要銀行を米ドル決済システム、SWIFTから排除した。半導体やぜいたく品の輸出も規制。最恵国待遇を撤回した。日本企業も軒並み、ロシアからの撤退を進めた。

日本政府はさらに、在日ロシア大使館員8人を国外退去処分にした。欧米諸国が計400人以上のロシア外交官を追放しているのに比べれば少ないが、日本がロシア外交官の一斉追放に踏み切ったのは戦後初めてだ。

岸田首相は「ロシアの行為は戦争犯罪」「ウクライナ情勢は明日のアジア」と主張し、東南アジア諸国に対露制裁への同調を呼びかけた。各社の世論調査では、国民の80%以上が日本政府の対露制裁を支持しており、米国民の70%台を上回る。首相は対露強硬外交を参院選の争点の一つに掲げ、勝利を狙っているようだ。