北方領土周辺では昨年以降、軍事演習を10回以上実施しており、島の要塞ようさい化を進めている。3月末には、国後島で夜間に強力な照明弾が発射され、海を挟んだ根室市民らを驚かせた。6月中旬には、ロシア海軍艦艇7隻が伊豆諸島付近を通過。揚陸艦などの津軽海峡通過もあった。

ロシア筋によれば、中露両海軍は昨年10月、日本列島一周共同航海を実施したが、6月15日以降も約10隻が日本列島周辺で共同航海を行った。準同盟関係に入った中露が、共同で対日圧力を強める構図だ。

数十億円分のウニが日本に入ってこない

ロシアは6月、北方領土周辺海域での安全操業協定の履行を停止すると日本側に通告した。日本漁船は1998年の協定に沿って、北方領土周辺で協力金を支払って安全操業をしているが、これもロシア側の報復措置の一環となる。

極東開発を統括するトルトネフ副首相は、北方領土海域での日本の漁業権を剝奪すると強調した。

択捉島の地元紙「赤い灯台」(4月13日)によれば、ロシア側は日本の「非友好的政策」を受けて、海産物の対日禁輸を検討している。北方領土周辺からは、カニやウニ、イクラなど年間約1万7000トンの高級海産物が日本に輸出されており、禁輸となれば、食卓への打撃は必至だ。カニやウニの価格はすでに高騰している。

ウニは国後島南部海域が好漁場で、日本への輸出額は年間数十億円に上る。ただし、ロシア人はウニを食べないだけに、禁輸は国後島の漁民を直撃することになる。

築地魚市場
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中国が「サハリン2」乗っ取りを要求する?

日露経済関係で最大の焦点は、サハリン2の行方だろう。日本はLNGの全輸入量のうち、約8%をサハリン2から調達。三菱商事と三井物産が参画するが、操業に当たる英シェルは撤退を決め、インド企業に売却を検討中と報じられた。

岸田首相は「エネルギーの安全保障上、極めて重要なプロジェクトだ」とし、撤退しない方針を表明している。サハリン2のLNGは長期契約で価格も安定している。仮に、撤収するなら、スポット価格で調達することになり、電気料金引き上げにつながる。

業界筋は「反日色の強い地元・サハリン州には、日本に撤退を要求する強硬論があるが、ロシア政府はそこまでしないだろう。投資環境が悪化し、得策ではない」としながら、①中国がロシアにサハリン2の乗っ取りを強要する、②バイデン米政権が日本に撤退を促す――可能性を指摘した。

こうして、ウクライナ戦争の長期化は、日本のエネルギー事情や食生活を脅かす恐れがある。

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