「何とか局長の求めたところに郵便局を建てられるよう工夫しよう」
2020年1月、都内のホテルで開かれた組織の会合で、山本利郎・全特会長(当時)はこう言い切っていた。
「局長が『ここがいい』と思ったところは、できるだけ実現するよう知恵を出そうという話。公募とはそういうこと。(略)局長が求めたところに何とか建てられるように、一緒に工夫しようというスキームを作り上げた」
山本氏は、局舎取得の社内ルールは既得権益と見られないようにするためにできたものだと説明し、こう続けた。
「各支社の店舗担当は(局長の)意見を最大限に尊重するスキームになっているはず。そういう流れを理解して土地探しをしてほしい」
山本氏自身も休日に支社の担当部長を連れ、土地を探していたといい、地元で解消できない問題があれば、各地方会と支社の間に設けた「タスクフォース会議」を活用するよう求めた。郵政事業に無知な社外取締役が局舎の問題に関心を持ちやすいとして、そうした人を納得させる必要があることも強調した。
さらにもう一つ、興味深い話があった。局舎の建設地を地主から借りる際、日本郵便がじかに借りる賃料のほうが、局長個人が借りる賃料より高くなるケースがあると明かされていた。
これは、日本郵便が相場や交渉に応じて柔軟に賃料を決めるのに対し、局長が借りる場合は固定資産税額を基に機械的に算出されるためだ。ここ数年は地価の上昇傾向も背景に、局長の借入額が相場より低くなりやすかったとみられる。
疑念だらけの日本郵便にユニバーサルサービスを担う資質はあるのか
ということは、局長らは地主に損をさせかねないとわかりながら、相場より低い賃料を地主にのませてでも、土地を自分に譲るよう働きかけていたことになる。
郵便局の利用者のためではなく、地主のためでもない。会社のためではなく、局長個人のためでさえないかもしれない。局長会という組織のために企業ルールを逸脱する慣習が、民営化して15年が過ぎた今も平然と見過ごされている。なんともさもしい姿ではないか。
日本郵便は政府が株式の3分の1超を持ち続ける日本郵政の主要会社だが、郵便を中心とするユニバーサルサービスを担う資質があるのか。疑念は膨らんでいく。
※郵便局長会に関する情報は、筆者(fujitat2017@gmail.com)へお寄せください。