取締役会で認める局長の局舎取得は、地主が局長にしか土地を譲らない意向であることが、「真にやむを得ない」事情として報告されていることが多い。その前提となるのが、支社の社員が地主と会い、意向を聞き取って作る「対応記録表」なのだが、そこでウソが横行しているのだ。

ウソの記載が判明している「対応記録表」のサンプル
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ウソの記載が判明している「対応記録表」のサンプル

「日本郵便に譲ってもいい」が「世話になっている局長に売りたい」に

典型例は、地主から「日本郵便に譲ってもいい」「べつに局長にしか売りたくないわけじゃない」と言われていたのに、対応記録表には「土地は局長に貸したい」「理由はいつもお世話になっているから」などと地主が述べたと記すパターンだ。その内容を基に取締役会向けの報告書が作成され、局舎取得の決議が引き出されてきた。

日本郵便も対応記録表に虚偽があったことだけは認め、虚偽の内容を記したと認めた支社社員を処分する方向だ(参照:取締役会にウソ報告か 日本郵便社員が局長の不動産取得で不正:朝日新聞デジタル)。

だが、これは「不正な局舎取得」の一端に過ぎない。取締役会に対する同様のウソが、実際には組織的になされていた疑いがある。

郵便局の移転先を探すのは本来、支社社員たちの仕事だ。だが、局長が局舎を欲しがっている場合には、好立地の地主への接触や交渉はあえて局長にやらせている。理由は、支社の社員がウソをつかなくて済むようにするためだ。

地主の立場なら、「日本郵便」と「郵便局長」と二つの交渉相手が競合するなら、賃料や売買価格が少しでも高いほうに譲りたいと考えるのが自然だ。仮に同額となるとしても、大企業が取引先のほうが食いっぱぐれがない。

根回しが失敗した場合は郵便局の新設自体が白紙になることも

ところが、地主の元へ局長が先に接近し、その立場や地縁を生かし、土地を日本郵便ではなく、局長自身に譲るよう働きかける。合意を取り付けた暁には、訪ねてくる支社社員に「土地は局長にしか譲らない」「局長には世話になっているから」と話すよう求める。こうした根回しや口裏合わせができた場合にだけ、支社社員が訪ねるステップへ移る。地主への根回しができず、郵便局の新設を先送りしたり諦めたりする例もあるほどだ。

つまり、支社社員がウソをつかざるを得なかったのは、局長による根回しや口裏合わせが失敗していたケースに限られる。実際には、地主が日本郵便に譲ってもいい、あるいは本心では日本郵便に譲りたいと考えていたにもかかわらず、その事実を局長と共にねじ曲げて取締役会へ報告していたケースのほうが多いとみられる。