日本郵便は「直接取引の妨害には当たらない」と苦しい言い訳

日本郵便の発想としては、地主が「局長に譲る」と口にする場面さえつくれば、「ウソにはならない」と考えているようだ。だが、取締役会に対する報告が、地主に小芝居を打たせる「やらせ」で成立していること自体、組織を挙げてウソをついているも同然ではないか。

局長が先回りして地主に働きかけ、日本郵便との直接取引を妨害している行為をどう考えるのか。日本郵便広報室にそう尋ねると、局長が「自分に譲ってくれ」と言っていても「日本郵便に譲るな」と明言していなければ、日本郵便との取引を妨害したとは言えない、などと回答してきた。理屈をひねりすぎて、常識では理解しがたい領域へと突き進んでいる。

局長の組んだローンで利息収入を得る局長会

日本郵便がそこまでして局長の行動に目をつぶるのは、それが全国郵便局長会(全特)の意向によるものだからだろう。

藤田知也『郵政腐敗 日本型組織の失敗学』(光文社新書)
藤田知也『郵政腐敗 日本型組織の失敗学』(光文社新書)

全国の局長約1万9000人が所属する全特が「三本柱」に掲げる重要施策には、局長の後任は自ら選ぶ「選考任用」、同じ局で働き続ける「不転勤」と併せ、局長は自ら局舎を持つべきだとする「自営局舎」がある。局長に局舎を持たせるのは、転勤阻止などに役立つためだと教えられている。

だが、本当の理由は別にありそうだ。

実は、局長による局舎の取得で、いちばん得するのは局長会という組織である。民営化で賃料が下がったため、ローンを組んで局舎を取得しても、今は局長自身はほとんどもうからない。一方、局長に多額の建設資金などを融資する一般財団法人の郵便局長協会は、食いっぱぐれのない利息収入を着実に得られる。協会は住所も役員も各地の地方郵便局長会とほぼ同じだ。これが自営局舎を必死で守り抜く本当の理由ではないか。