多くの経営者は社員に話を聞いてもらいたい
まず、経営者や自分の上役に対する話の聞き方について。
コーチングをしていると、よく、「社長の話なんて聞いたって意味ありませんよ、同じことしか言わないんだから」という声を聞くことがあります。
社長の話といえば、企業理念の話だったり、若い頃の苦労話や自慢だったり、経営状況や指示だったりと、たしかに朝礼や会議での「その手」の話というのは、ある程度、パターンが決まっているかもしれませんので、そう言いたくなる気持ちもわからないではありません。
一方、コーチングで経営者の方に話を聞くと、こんなことをおっしゃいます。
「社員が話を聞いてくれないんですよ」
どうも、多くの経営者の方たちは社員に話をしたがっている。それに対して、社員たちは聞きたくないと思っている。
それが、多くの会社の実情のようです。
私に言わせると、この状況は、社員にとって実にもったいないものだと思います。
なぜなら、経営者の話を聞くと、次のようなメリットが見込めるからです。
・メリット② 経営者の意図が理解しやすくなる。
・メリット③ 経営者に信頼してもらえる。
・メリット④ 出世につながる(かもしれない)。
多くの社員が話を聞いてくれないことに悩む経営者や上司にとって「お話をぜひ伺いたい!」と言ってくれて、口を挟まずに聞いてくれる人がいたら、やはりうれしいし、印象に残りますよね。
メリット④については、今どきは社長の鶴の一声で人事は決まらないようですが、少なくとも、メリット③、経営者からの信頼は得られるはずです。
絶対に言ってはいけない“ある相槌”
私は、自分よりも上の立場の人の話を聞くときは、「ダークな好奇心」が大切だと思っています。
ダークな好奇心とは、「社長はいつも同じ話をする」という批判的な気持ちを疑問形に変えて、「社長はなぜ、いつも同じ話をするのだろう?」と考えることで生じる小さな好奇心のこと。
この人は何を言おうとしているのかな……ということを紐解きながら聞く姿勢を持つことで、相手への理解が深まりますし、施策や行動の意図も理解しやすくなるので、ぜひ、ダークな好奇心を持って聞くようにしてみてください。
ここで、会社のエライ人たちが、なぜ、同じ話を繰り返すのかについて触れておきます。
例えば、飲みに行ったときに、なぜ上役は、毎度毎度、同じ自慢話を始めるのか?
結論から言うと、「最後まで話をさせてもらえないから」です。
話の途中で、聞いている相手があきらかに興味をなくしている顔をしていたりして、いつも、心ゆくまで話をさせてもらえないのが最大の原因なのです。
つまり「話を終えること」できなかったから、また次のときも「伝えなきゃ」と考える傾向があるのです。
もし、上役との関係を良好なものにしたいなら、話を最後まで聞き切ることを意識してください。
たとえ、2回や3回、同じ話を聞いたって、それで相手にポジティブな感情が生まれるなら、それもよいではありませんか。ちょっとした「関係性への投資」だと思えば楽なものですね。
最後に、上役の話を聞いているときのNGワードについて。
「また、その話ですか」「あっ、その話はこの前も聞きました」などは、たとえ、飲み会の席でもNGだと心得ましょう。それと、「はいはい」という相づち。これをやられた相手はとても不快に感じるので絶対にやめましょう。
逆に、上役が気持ちよく話を終えられるひと言は、「勉強になりました!」でしょうか。
ひと昔前なら、「おまえ、どこでそんな社交術を覚えた」なんて言われたかもしれませんが、今どき、そんな可愛いことを言う部下はまれなので、「コイツ、できるな」なんて思ってもらえるかもしれません。