延命治療をしてよかったのかと悔やむ家族

そのことを最も痛切に感じたのは、間近で見ているご家族ではないかと思います。もちろん、医師や看護師が処置をしている最中はご家族に見せることはありません。

ですが、救命や延命措置が行われた後、たくさんの管につながれながら、変わり果てた姿でベッドに横たわっている。その姿を見て、本当にこうした措置を行ってよかったのかと、後悔の念にさいなまれるご家族がいたことも事実です。

病院の待合室
写真=iStock.com/jsmith
※写真はイメージです

なぜ、救命救急の現場でこのような措置が取られるのか?

まず、心肺蘇生や延命治療を行うかどうかについては、ご本人の意識がないため、ご家族に確認します。ところが、ご家族もご本人の意思を把握していないことが多いので、なかなかすぐに決断ができません。その上、救急搬送されたショックもあり、思わず「命を助けてほしい」と、同意してしまうケースが多いのです。

ご家族と連絡がつかない場合も、医師の判断で救命措置がとられることになります。病院はまず「命を救う」ことが第一優先だからです。

ただ、「命を救う」という認識が、病院側とご家族の間で必ずしも一致していないのも事実。ご家族は「どうにか本人の命を助けてほしい」と救命や延命措置に同意しますが、病院はあくまで「救命すること」が目的であって、倒れる以前の状態まで回復できるとは限りません。

一命を取りとめたとしても、重篤な後遺症をもたらす可能性がある

蘇生行為によって一命を取りとめたとしても、意識不明のままであったり、重篤な後遺症をもたらしたりすることもあります。

それに加え、延命治療を途中でストップすることは困難です。現行の法律に「尊厳死」はなく、もし延命治療を中止した場合、医師の刑事責任が問われる恐れがあります。

そのため、人工呼吸器を一度装着したら、自発呼吸が見られるなど回復の兆候が見えない限り、外すことはできず、意識がないまま何年、何十年と延命され続けるケースも少なくありません。

その間、家族が通院して介護することになり、精神面、肉体面のみならず、経済的にも多大な負担を強いられます。