おそらくタニタのレシピ本も、社員である栄養士さんが職務として作成したもの。法的には印税は会社のもので、分け前を支払う必要はないというわけだ。タニタのケースは両者で円満に話がついているのかもしれない。ただ、最近は会社に勤めながら執筆や創作活動をする人も少なくない。はたしてどこまでが職務著作で、どこからが自分のものといえるのか。実は、職務著作には、図表の5つの要件がある。
このうち注意が必要なのは(2)「業務に従事する者」だろう。労働法上、派遣社員やアルバイトは会社と雇用関係にないが、会社の指揮命令で動いていれば著作権法上、業務に従事する者とみなされやすい。(4)「著作の名義」も混乱のもとだ。会社名か個人名、どちらかで発表されていれば著作権者は明確だが、「○○社××部長○田×朗」のように両方の名が入っていると話がややこしくなる。
「ケースバイケースですが、両方の名が入っている場合は、著作の内容についてどちらが責任を取るのかというところが判断の分かれ目になるでしょう」(同)
最後に野口弁護士は、組織に所属しつつ表現活動をする人に、こうアドバイスしてくれた。
「もし自分の著作物であることを示したいなら、自分の名を著者として入れておくべき。本であれば『これは私の個人的見解であり、所属する組織を代表するものではありません』と一言入れておくと、個人の著作であることがより明確になるのではないでしょうか」
(図版作成=ライヴ・アート)