「最悪でもこの程度で済みそうだ」と想定しておく

ふたつ目は、深刻に悩むくらいなら、あらかじめ「ソリューション」(解決策)を用意しておくということです。

がん検診を頻繁に受けている人はたくさんいますが、自分ががんになったら、どこの病院で治療を受けるのか、その先のことを考えている人はほとんどいません。

レントゲン写真を見ている医師
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認知症が不安なら、心配ばかりしていないで、介護保険を受給するための準備を今から整えておけばいいのです。

もしこうなったら、どうするか……を先に考えておくということです。

心配ごとが起こった後の善後策を事前に用意しておけば、不安は軽減されます。

前もって準備しておくことで、「安心材料」が増えるのです。

最近では、老後の資金が足りなくなることを心配する人が多くなっています。

「このままでは老後に貧乏する」と悩んでいる人も少なくありません。

こういう人に限って、年金制度については何も知識がなく、具体的な老後のプランもありません。

極端なケースでいえば、すべてのお金を遣い切ったとしても、生活保護という救済制度がありますから、「このくらいの老後は送れるな」という計算だけは成り立ちます。

年金制度や生活保護の勉強をしないで、先々の貧乏の心配ばかりしていても、不安が消えることはありません。

最悪の結果を想定して、ソリューションを用意しておけば、モヤモヤとした不安を冷静に見つめ直すことができます。

「最悪でも、この程度で済みそうだな」

こうした「読み」ができれば、漠然とした不安に悩む必要はなくなるのです。

不安が的中する「確率」を計算する

3つ目は、不安に思うことが実際に起こる「確率」を冷静に検討してみることです。

予期不安が強い人というのは、確率の計算ができないというか、そもそも確率を考えていません。

起こる確率が極端に低いことを、深刻になって心配している人が多いのです。

例えば、墜落事故が怖くて飛行機に乗れないという人がいますが、飛行機の事故は交通事故とは比べものにならないくらい少ないわけです。

文部科学省が発表した国内事故統計に基づく推計(1983~2002年)によれば、ひとりの人が今後30年以内に航空機事故に遭遇して死亡する確率は「0.002%」です。

交通事故で死亡する確率は「0.2%」ですから、100分の1以下となります。

精神科医としては、あまりにも起こる確率が低いことを心配しすぎる人には、何らかの病気を疑います。

人には「無視できる確率」があるからです。

無視しなければ生活が成り立たなくなるような確率のことは、心配したところで、どうにもなりません。

それを「万が一」と考えていたのでは、何もできなくなってしまうのです。