ただ、これはコロナ禍に半導体不足が重なる中で、新車の供給が遅滞しているためで、一時的な現象と言えます。少なくとも、日本のようにプラモデルや健康飲料などの「商品」がプレミア価格になるということはありません。人気化するようなら、生産を増やすことで供給が確保されるからです。
では日本の場合は、どうして転売ヤーが登場することで商品が品薄になったりするのかというと、メーカーの側で生産を増やすのが簡単ではないからです。それは日本の市場が中長期の観点からは、人口減により縮小することが明らかだからです。商品がヒットしたからといって、簡単に生産ラインを増やすことができないのは、そのためです。
転売による価格吊り上げのターゲットになる、電子機器やプラモなどの商品は、対象が比較的高齢層だということもあります。いくら購買力のある層を市場にしていても、その層がより高齢化する中で、その商品が下の世代にはアピールできない性質のものであれば、今後を考えると、無理に供給力を拡大することはできません。
つまり、日本の場合は人口の縮小と経済の衰退が起き、また同時に格差の拡大が起きていることが、転売ヤーの「つけ込む」余地になっているのだと思われます。かつてアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領は、行き過ぎた自由競争がかえって自由経済を傷つけることを認識して、独占の禁止を含む公正取引という概念を導入しました。それとは別の意味で、日本における格差の拡大と市場の縮小が、自由な価格形成を阻害している現状については、経済学の立場からしっかりと検証が必要だと思います。
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら