人類が分布を拡大した地域で大型動物が絶滅していった

ヒト属の一員として私たち現生人類ホモ・サピエンスは約20万〜30万年前にアフリカ大陸に現れて、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸へと広がっていきました。そしてアジアを経由し、アメリカ大陸に到達したのが約1万5000年前と考えられています。日本では縄文時代の前の、旧石器時代のできごとです。

ちなみに、ヒト属にはホモ・エレクトス・ペキネンシス(北京原人)やホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)なども存在しましたが、私たちホモ・サピエンス以外のヒト属は絶滅してしまいました(ただし、近年の研究で、ネアンデルタール人はホモ・サピエンスと混血していて、現生人類の一部はネアンデルタール人の遺伝情報をわずかながら受けいでいることがわかっています)。

原始人のマネキンと洞窟
写真=iStock.com/Gregory_DUBUS
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アフリカからヒトが分布域を拡大するにともなって、行きつく先々で、メガファウナと呼ばれる大型動物たちが絶滅しました。

「メガファウナ」というとなんだかカッコイイですが、メガは英語で「大きい」、ファウナは「動物たち」で、そのまま「大きな動物たち」という意味です。メガファウナの多くは哺乳類ですが、大型の鳥類や爬虫はちゅう類なども絶滅しました。体の大きな動物は人間の狩猟の標的になりやすいという以外にも、絶滅しやすい原因がいくつかあります。

大型動物はほかの動物と比べて絶滅しやすい

まず、体が大きければそれだけ多くの食料と広い生息地を必要とするので、面積あたりの数も少なく、種としての総数も少なくなる傾向があります。何らかの理由で生息地がせばめられると、最初に絶滅の危機におちいるのは、こういった広い生息地を必要として比較的低密度で暮らす、大きな動物たちなのです。

また、体が大きいと性成熟する(大人になる)までに長い時間がかかり、メスが一度に産む子の数も比較的少ないので、個体群の数が増える速度もゆるやかです。つまり、何らかの原因で個体群が減少すると回復に時間がかかります。そして、その間に減少の原因が取り除かれなかったり、新たな減少要因が加わったりすると、絶滅リスクが格段に高まるのです。

さて、話をヒトの分布域の拡大に戻しましょう。ヨーロッパにホモ・サピエンスが到達したのは4万5000年ほど前だと考えられています。

その後、ホラアナライオンと呼ばれる現在のライオンに非常に近い仲間や、マンモス、サイの仲間たち、とてつもなく大きな角を持っていたギガンテウスオオツノジカなど、たくさんのメガファウナが絶滅したことがわかっています。

フランスのショーヴェ洞窟には数々の動物の壁画が残されていますが、その多くがすでに絶滅したメガファウナたちです。壁画を描いた当時のヒト属は、彼らの描いた絵がまさか絶滅動物図鑑になるとは思っていなかったことでしょう。