かつて北米にはラクダの仲間やマンモスが生息していた

約1万5000年前にホモ・サピエンスが到達したアメリカ大陸でも、多くのメガファウナが絶滅しました。

特に北米では絶滅したメガファウナの研究が進んでいて、35属が絶滅したという記録が残っています。化石をたよりに種を同定するのが難しいので、属としてのデータ集計になっているのだと思います。仮に少なく見積もって、1つの属に平均して2種の動物がいたとすると、70種ものメガファウナが絶滅したことになります。

その代表としてよくあげられるのが、ものすごく長い牙を備えていたサーベルタイガーやアメリカライオン、アメリカチーター。そして、立ち上がると6メートルにもなる巨大なナマケモノ(図版1)の仲間たちです。

いまは絶滅してしまった体長6メートルのナマケモノ
図版1:いまは絶滅してしまった体長6メートルのナマケモノ(出所=『大絶滅は、また起きるのか?』)

また、かつて北米にはラクダの仲間やマンモスもいました。このように、アフリカから始まったホモ・サピエンスの分布域拡大が世界中におよぶ頃には、少なくとも150属の哺乳類、2000種以上の鳥類、そして15属の大型のカメが絶滅したと報告されています。6度目の大絶滅への道は、メガファウナを中心にすでに旧石器時代に始まっていたのです。

人間のターゲットにされてきた猛獣

6度目の大絶滅は、過去の5つの大絶滅と比較して2つの点で大きく異なっています。1つ目は、ホモ・サピエンスという1種類の生きものにより大絶滅が引き起こされているという点。2つ目は、絶滅の対象となる種類が大型の動物にかたよっているという点です。

2つ目がまさにメガファウナの絶滅なのですが、この傾向は現在も続いています。特に、私たち人間は、積極的に「猛獣」と呼ばれる生態系における頂点捕食者(食物連鎖の頂点に立つ捕食者)を絶滅させたり、絶滅に追いこんだりしてきました。

かつて日本でも本州、四国、九州と広く分布していたニホンオオカミという頂点捕食者が1900年代初めに絶滅しました(なお、かつて北海道にいて絶滅したエゾオオカミは、ニホンオオカミとは異なるタイリクオオカミの亜種だとされています)。

僕の祖父は1900年代初めの生まれですが、その祖父は、そのまた祖父からオオカミの話を聞いたのをよく覚えていて「いかにオオカミが賢かったか」を幼い僕に何度も話してくれました。一昔前までは、日本でもオオカミは身近な存在だったのでしょう。

ニホンオオカミが絶滅した原因は、イヌの伝染病がオオカミに伝染したことや、生息地の破壊、獲物の減少、そして人為的な駆除など、複数の要因がからみあっていたと考えられています。なかでも人為的な駆除は、それなりに大きな影響があったはずです。