妻が管理職の夫の幸福度は低い

図表1は妻の就業状態別の夫の幸福度の平均値を示しています。

出典:佐藤一磨(2022)「管理職での就業は主観的厚生と健康にどのような影響を及ぼしたのか」PDRC Discussion Paper Series, DP2022-002,
出典=佐藤一磨(2022)「管理職での就業は主観的厚生と健康にどのような影響を及ぼしたのか」PDRC Discussion Paper Series, DP2022-002, 

ここでは、妻の就業状態を①管理職の正社員、②非管理職の正社員、③非正社員、④非就業の4つに分類しています。なお、夫婦ともに59歳以下の現役世代に限定しています。

図表1から明らかなように、夫の幸福度の平均値は妻が④非就業の時に最も高く、①管理職の正社員の時に最も低くなっていました。

この結果は、「妻が管理職の夫の幸福度は低い」ことを意味します。

ちなみにこの結果は、夫の年齢、学歴、子どもの有無や夫婦それぞれの年収、労働時間といった要因を統計的手法でコントロールしても、変わりませんでした。

専業主婦を持つ男性の幸福度が最も高い

図表1の結果から、妻の管理職での就業のポジティブな影響とネガティブな影響のうち、ネガティブな影響の方が強かったと考えられます。

ネガティブな影響の原因として、夫の家事・育児負担や夫婦のすれ違いの増加、性別役割分業意識からの乖離といった要因が考えられますが、どの要因の影響力が強いのかは明確には判断できません。

ただし、図表1の結果が示すように、「妻が働いていない夫ほど幸福度が高い」という点を考慮すれば、性別役割分業意識の影響は無視できないと言えるでしょう。