「未来は悪い」と考える人は今を改善する努力をしない

これから先を考えて恐れたり、不安になったりするのにはわけがあります。「孤独死するかもしれない」という恐れに囚われている人は少なくありません。家族に頼らず、死んでからの諸々のことは友人に任せようという人もいますが、煩瑣はんさな手続きを引き受けてくれるような友人がいなければどうするのかという問題があります。そのようなこれから起こるであろうこと、死んでからのことを思うと不安でならない気持ちはわかります。

しかし、「不安や恐れに囚われているので、前向きに生きられない」のではありません。むしろ、「前向きに生きないために、孤独死するかもしれないというような不安に囚われている」と考えた方が、不安に囚われる真実に近づけます。

私は「未来に向けた原因論」という言葉を使うことがあります。本来、原因は過去にあるので、未来について「原因」という言葉を使うのはもちろんおかしいのですが、未来に起こることが、今の人生、そしてこれからの人生のあり方を決める原因となると考えるという意味です。

これからよいことは決して起こらないとか、今いいことがあってもどうせ長続きしない、最後には必ず何か悪いことが起こると考える人は大抵、今の状況を改善する努力をしないことを決心しています。そのように考えることで、今幸福である人は今の幸福にブレーキをかけますし、今不幸であると感じている人は、不幸の原因は未来に起きる悪しき出来事だと考えるからです。

科学者の後ろ姿
写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
※写真はイメージです

「人生が思うようにならないのは自分のせいではない」

実際には、未来に何が起こるかはわからないので、これから起こる出来事を今の人生を前向きに生きられない原因にすることはできません。これからどうなるかもわからない人生を切り拓いていけるのは自分だけなのですが、どんな努力もしないでおこうと思う人は、これから起こる出来事はよくないことだと決めておけば、人生が思うようにはならなくても、その原因を自分のせいにしなくてすみます。

もちろん、どんなに努力しても人生が思い通りになるわけではありません。思いもかけない事態が訪れて、人生の行く手を阻むことがあるからです。

それでも、何もしないより、できることをしていけば、人生は必ず変わっていきます。たとえ不幸な出来事に遭遇したとしても、悲しみにただうちひしがれているのでなく、悲しみを梃子てこにして人生を生き抜く勇気を持つのと持たないのとでは、大きな違いがあります。