在宅勤務中の孤独から解放された一人暮らし社員のケース

Aさんのように出社勤務がネガティブでストレスだと感じる人がいる一方、出社勤務をポジティブに捉え、喜ぶ社員もいます。

Bさんは勤続5年目の30代女性でした。コロナ禍で一人在宅勤務をしていると、どうしても気分が沈んでしまうと昨年面談に来られました。在宅勤務のおかげで仕事は早く終わるけど、あいた時間に特に熱中する趣味もなく、自分のキャリアや将来について考えてしまい、時間がある分だけ余計に不安になってしまうとのことでした。

コロナ禍で定期的に産業医面談(雑談)をしていましたが、彼女は今年になり出社が許可されると、週数日は出社するようになりました。特に同僚とランチや飲みにいかなくても、仕事している時間に同じ空間に他人がいることを感じることができる環境は彼女にとっては居心地がいいようでした。通勤時間がかかってしまうものの、週に数日出社できることで不安な気持ちもなくなってきたと最近は言っています。

オフィスで机にもたれて座り、腕組みをしてカメラを見ている自信に満ちた笑顔の髭面のビジネスマン
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「学童に預けるのは手抜きではない」ママさん社員のケース

働く環境の変化でなく、在宅勤務と出社勤務が混ざる中で、生活時間の変化に戸惑う面談者もいました。

Cさんは勤続10年以上の30代女性で、小学生二人の子供のお母さんでした。コロナで在宅勤務が始まった時は、下の子はまだ保育園だったため、保育園が閉園になると在宅での仕事が捗らないストレスから、寝付きが悪くなり、また、少し気持ちが不安定になり産業医面談に来ていました。

その後、家族全員が次第に在宅勤務の生活に慣れるにつれ、夕食もコロナ前よりも手の込んだものを作れるようになり、また、家族の団欒を楽しめるようになり、コロナ禍の生活に適応していました。

しかし、今年の春になり、Cさんは週3回出社せねばならなくなりました。出社日が在宅勤務日に比べて忙しいことはわかっていましたが、だんだんと2年前と同じような寝付きの悪さに不安を覚え、久しぶりに産業医面談に来られました。

話を聞いてみると、出社勤務日も在宅勤務と同じように掃除や夕食の準備をしなくてはならないと感じている印象でした。また、出社日に子供たちを学童保育に行かせていることにも罪悪感を持っていました。

家事も育児も週末でいい

産業医面談の中で、コロナ前は掃除や大きな洗濯物は週末にまとめていたこと、夕食の準備も日によっては出来合いのものを使っていたことなどを思い出していただきました。すると、Cさん自身が、出社日はもう少し家のことを楽にしていいのだと思えるようになりました。

また、子供たちが学童保育の時間を楽しめていること、お手伝いも積極的にしてくれていることなどから、子供たちが2年前よりも大きく成長していることにも気がつくことできました。

小さな娘と自宅で洗濯をしながら楽しく笑顔で過ごす若い女性
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この面談を通して、Cさんは在宅勤務日と出社日について、必ずしも同じように家事や育児をこなさなくていいのだと思えるようになったのです。

「少し肩の力が抜けるような気がします……」。Cさんがそのようにおっしゃって以来、面談にはいらしていません。少しずつ出社勤務の流れ(back to officeの流れ)の生活に適応しているのだと信じています。