戻ってきた出社勤務はストレスではない

私は社員に出社か在宅かの勤務を求めるのは、会社の権利だと考えます。では、出社勤務の流れ(back to officeの流れ)は、働く人たちにとってストレスなのでしょうか?

私は、back to officeがストレスだとは思いません。back to officeはあくまで生活の変化、働き方の変化なのです。実は、back to officeに伴う出社勤務は、新しいものではありません。コロナ前はほとんどの人が当たり前の日常としてやっていたことなのです。

コロナ禍でも毎年1000人以上の働く人との産業医面談をしてきた私が思うのは、会社が下すどのような判断にも、それをポジティブに捉える人も、ネガティブに捉える人もいます。ストレスは人によりそれぞればかりか、同じ人にとっても時とともに全く変わるものでした。例えば、ストレスだった在宅勤務が、時間の経過とともに居心地が良くなり、同じ人が出社勤務に今度はストレスを感じるケースもありました。

back to officeによる変化は大きく分けて2種類あります。環境の変化と時間の変化です。

先ほどのAさんとBさんは働く場所(自宅環境か職場の環境)の変化に伴い、その周囲の見えるもの、聞こえるもの、人の気配などの環境変化に影響を受けていました。一方、Cさんは働く環境の要因よりも、働く場所の変化に伴う生活時間の変化、出社日は在宅勤務日よりも忙しくて時間がないことに影響を受けていました。

環境の変化に伴う3種類の疲労とは

人は変化にさらされた時、3種類の疲労をためます。通勤や外で過ごす時間が増えたことなどによる肉体的な疲労、他人と接する/他人に見られる時間が増えたことによる精神的な疲労、そして、生活リズムの変化に伴う生活の疲労です。

いずれも、時間の経過とともに変化に慣れることで、疲労が自然に消える人が多いですが、ときに、いくつかの疲労が重なったり、まとまって蓄積してしまったりすると、健康を害するレベルになってしまいます。出社勤務の流れ(back to officeの流れ)をストレスとして抗うのではなく、しなやかに適応するのは、この変化の中で疲労をためずに慣れていくことができるか否かなのだと感じます。