周囲の良いアドバイスや成功ノウハウを得ても、「無理」「そんなことできない」と頭から否定するタイプがいる。「現状維持が安心安全という価値観に縛られ、“やらない理由”を探す癖がついているんです」と指摘するのは、経済評論家の勝間和代さんだ。新著『できないのはあなたのせいじゃない』より、“変わりたくない病”に対処するコツを紹介する──。(第4回/全5回)

※本稿は、勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

ブレインロックを固定化する「現状維持バイアス」

人の成功や新しい挑戦の体験談を聞いたときに「自分には無理!」「そんなことできないよ」と、すぐに否定から入ってしまう人がいます。逆に、「自分もやってみたい!」「私にもできるかも」と考える人がいます。

その違いはいったいどこにあるのでしょうか?

ブレインロックがなかなか外れない原因に、「現状維持バイアス」があります。否定タイプの方はまさしくこのバイアスの持ち主です。

「現状維持が安心安全!」という価値観に縛られ、新しいことを始めない理由を常に探してしまう癖がついているのです。

スライスされた図
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現状維持は「ゆるやかな後退」

現状維持バイアスのデメリットには、行動の過度なパターン化に陥りやすいということもあります。1つの環境に特化して過度に最適化すると、逆に柔軟性を失い、ちょっとしたトラブルにも脆弱ぜいじゃくとなります。

金融業界でよく使う用語に「カーブ・フィッティング」があります。これは、トレーディングシステムを過去の相場に最適化することを意味しています。

当たり前ですが、現在の相場は過去にあったパターンの通りに動くことはなく、常に変動しているため、実際にはこのシステムを使ってもよい結果を得ることは難しくなります。変化が激しくなるほど、カーブ・フィッティングを用いた投資の実績は悪くなる、というわけです。

同じように、1つの企業に数十年勤め、企業文化や独特のやり方に染まり過ぎてしまうと、異動や転職で環境が変わったときにパフォーマンスを落とす確率が高くなってしまいます。今いる企業の常識ややり方がほかの企業では非常識だったり、時代遅れのスキルでしかなかったりすることもありえます。

いずれにせよ、現状維持は「安定」ではなく、「ゆるやかな後退」「少しずつ高リスクになる状態」という認識を持っておくことが大切です。