本当に人の役立つ技術が利益を得てほしい

「空間除菌」というアイデア自体は荒唐無稽ではなく、検証する価値は十分あります。“air disinfection”(空気消毒)で医学論文を検索してみると200件以上の論文が引っかかります。化学物質を利用したものは少なく、多くは紫外線による殺菌効果を利用しています。もちろん、紫外線は人体に有害ですので、人に直接当てることはできません。人に当たらないように部屋の上部や空調システム内部に紫外線を照射します。地下や大きな建物など、普通の換気だけでは不十分な場所では新型コロナウイルスの感染予防に役立つ可能性はあります。

一方、空間除菌を謳う商品に使われている二酸化塩素にも使いどころはあります。新型コロナウイルスでは主要な感染経路ではありませんが、病原体によっては物体の表面を介して感染します。表面を拭けば感染は予防できるものの拭くのが難しい場合だってあるでしょう。紫外線だと影になった部分は消毒できませんが、気体の二酸化塩素なら全体に行きわたります。実際に二酸化塩素ガスは、病室や車内の消毒に利用されています。空間除菌を謳う商品と違って、人のいない空間で行いますので、効果が十分に期待できる濃度で使えます。

人が生活している環境下での使用にこだわらなければ、二酸化塩素を発生させる技術は大きなビジネスになっていたかもしれません。法の目をくぐって誇大広告を打ち人々の誤認を利用して儲ける企業ではなく、本当に人々の役に立つ技術を開発する企業こそが発展することを期待しています。

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