エビデンスがない・乏しい商品はたくさんある

その他にもエビデンスがないか、きわめて乏しいまま、定着したイメージを利用して販売されている商品はたくさんあります。膝の痛みにいいとされるグルコサミン、視力向上に効果があるとされるアントシアニン、二日酔いを防ぐといわれるウコン……枚挙にいとまがありません。

眼鏡と視力検査シート
写真=iStock.com/takasuu
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もちろん、これらに「全く効果がない」とは言い切ることは不可能です。いくつかは効果を示唆する興味深い報告もあります。また悪魔の証明といって、「全く効果がない」ことを証明することはできません。しかし、役に立つのか立たないのかわからないまま漫然と使用し続けるよりも、効くのか効かないのか、効くとしてどの成分がどの症状にどれぐらい効くのかを臨床試験ではっきりさせたほうが人類全体の利益になると私は思うのです。

ところが、こうした商品を販売する企業は検証に消極的です。わざわざ臨床試験を行ってヤブヘビで「効くという根拠がない」ことが明らかになる危険を冒さなくても商品は売れるのですから。最初のうちは、法律違反スレスレの、場合によっては法律違反も承知の上の誇大宣伝によって商品に対するイメージを定着させるというビジネスモデルがあるようです。今後は、空間除菌グッズも同様に、なんとなく感染予防に効果があるという人々の誤認を利用して売れ続けるのでしょう。

誇大な宣伝に対するペナルティーが軽すぎる

では、誇大宣伝に騙されないために、どのような対策がとれるでしょうか。消費者のリテラシーを上げることには、一定の効果はあるでしょう。空間除菌に本当に感染予防効果があるなら公的機関でも採用されるはずだとか、副作用が少なくがんに効果のある成分があるなら病院でも使われているはずだとか、そうした考え方を習得することで騙されにくくなるかもしれません。しかし、得手不得手や状況によって、論理的かつ科学的に考えることが難しい場合もありますから、消費者のリテラシーに期待するだけでは心もとないでしょう。

企業が利益を追求するのは当然です。お行儀よくルールを守るよりも、行政から警告されるリスクを冒してでも積極的に宣伝したほうが儲かるならば、そうする企業が出てきます。つまり、現在は誇大宣伝に対するペナルティーが軽すぎて、やったもの勝ちになっていると私には思えます。措置命令だけではなく、売り上げの一部を課徴金として納付させる制度もありますが、十分に機能しているとは言えません。ルールを守り、効果効能を積極的に検証する企業が利益を得ることができる仕組みを作ったほうがよいでしょう。