友人関係はどう構築するのがいいのか。明治大学教授の齋藤孝さんは「無理に親友を作る必要はない。福沢諭吉も『自分には莫逆の友はいなかった』と書き残している。大事なことは、特定の人と親しいことよりも、多くの人と緩やかにつながっていることだろう」という――。

※本稿は、齋藤孝『孤独を生きる』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

公園から沈む夕日に目をやる男性の後ろ姿
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親しい友達なんて、いなくても大丈夫

人間関係に生じる孤独感の源には、多かれ少なかれ、「親しい友だちが欲しい」「親友と呼べる友だちが欲しい」という欲求があるものです。

近年は孤独感に悩む若者に対して、何かと、「何でも相談できる友人を持ちなさい」的なアドバイスをするのをよく見聞きします。的確な助言ではありますが、それが逆に友人の少ない人を追いつめるケースもあります。「自分にはそんなに親しい友だちはいない」と、よけいに落ちこませることにならないとも限らないのです。そこで、私からのアドバイス。

「親しい友だちなんて、いなくても大丈夫だよ」

このことを教えてくれたのは、福沢諭吉先生です。彼は「自分には莫逆ばくげきの友はいなかった」と、あっさり言っています。「莫逆の友」とは、とても親密な友─親友のこと。いまはあまり使われない言葉ですが、出典は中国の古典『荘子 大宗師だいそうし篇』です。

四人の人物が語り合うなかで、「死と生は実は一体だ。そのことがわかっている者となら、友だちになりたいものだ」という話になり、一同、顔を見合わせて「心に逆らうこと莫し」と意気投合。親密な間柄になった。

という話が由来になっています。

似たような言葉に「刎頸ふんけいの交わり」があって、こちらは「その友人のためなら、お互いに首を切り落とされても後悔しないほどの親しいつき合い」を意味します。そこまで思える友だちなんて、いないのがふつうです。