“コミュニケーション筋”はコミュニケーションという負荷を与えることによって鍛えられるものなので、負荷ゼロになれば、当然、萎えます。孤独感に苦しむ段階など、あっという間に飛び越えて、どんどん「孤立」していきます。と同時に、“ゼロ・コミュニケーション”で過ごす時間が長引けば長引くほど、リハビリが大変になります。
そこまで重症化する前に、手を打つ。その方法が雑談により“コミュニケーション筋”を鍛えることなのです。
雑談習慣で“コミュニケーション筋”は鍛えられる
実は私自身、東京に出てきた当初、何となく孤独感に馴染んでしまい、危うく“コミュニケーション筋”を衰えるに任せるところでした。そこを救ってくれたのは、町のあちこちにいる「話し好きで、気のいいおばさん」たちでした。年のころは40代から70歳前後くらいでしょうか。
たとえば八百屋のおばさん。静岡出身の私は、ミカンを多いときは1日に20個くらい食べます。だからほぼ毎日、20個のミカンを買いに行きます。おばさんも不思議に思ったのでしょう。あるとき、
「今日もミカン、買いに来たの? 好きなのね」
「静岡育ちなんです、僕」
「そうだったんだ」
「つい食べ過ぎちゃって、手が真っ黄色になっちゃうんです」
「あらま、すごい。ほんと、マッキッキね」
みたいな会話を交わしました。それをきっかけに、ほんのわずかな時間ですが、おばさんと雑談するようになったのです。また毎日のように通っていた定食屋のおばさんも、良き雑談相手になってくれました。私はいつもコロッケ定食を食べていたので、自然と顔なじみになったのです。
あと銭湯のおばさんを加えた3人が、私にとっての“雑談相手トリオ”でした。いずれも毎日のように通って、顔なじみになることでできた関係です。時間にしてほんの2、3分、他愛もない話をするだけですが、日々営まれるその“雑談習慣”が私の“コミュニケーション筋”をずいぶん鍛えてくれたように思います。
“孤独感症状”は雑談で対処すればいい
そんな経験から、家にひきこもりがちの方には、こうアドバイスしたい。「話し好きのおばさんなど、毎日のように顔を合わせる人をターゲットに、1日3人と雑談すると決めて、それを習慣化させましょう」と。
もちろん雑談相手はおばさんでなくてもかまいません。「“雑談初心者”には話し好きのおばさんが、構えずに気楽に会話ができていいですよ」というだけの話です。
要は、ひとりきりの時間がもたらす“孤独感症状”は、軽いうちに、雑談で対処しておくことがポイント。コロナ禍で外出もままならないときは難しいかもしれませんが、近所に買い物に行くぐらいのことはできますよね。店先での二言、三言でいい、孤独感を遠ざけるトレーニングだと思って、日に3人との雑談を日課にするといいでしょう。