警戒もせず豪華なホテルに入っていった

そこで初めて女の顔を拝見。男よりも10才ほど若くて、美人系だ。仲良さげに話をする様子は、普通のカップルにしか見えない。思いっきり手をつないでるし。当然、尾行にまったく気づいてない。

その姿を見てなんともやるせない気持ちになる。なんだか男が可哀想だ。ま、自業自得なのは間違いないが。

そのまま歩みを進めてラブホ街に到着。特に周りを見回すことなく、豪華なホテルに入っていった。まさか、探偵に尾行されてるなんて夢にも思ってないんだろうな。

そしてやはりラブホへ
提供=鉄人社
そしてやはりラブホへ

『はい。○○ホテルに入ったよ。出入り口確認して』

満室の場合はホテルを出てきてしまうので、鉢合わせしないように気を付けながら、他の出入り口に先回りする。

入ってきた場所から出てくるとは限らないので、全ての出入り口を押さえておく必要があるのだ。

『はい。こっちは正面OK、裏口のタナカは?』
『OKです』
『西側の藤原と野村くんは?』
『大丈夫です』

このホテルは計3カ所の出入り口があるので、人数は十分だ。これだけ見張られていては、いくらバレないように出ていっても無駄だろう。すぐに出てくる気配がないので、どうやら入室したらしい。同行していた藤原が話し始めた。

「これで折り返し地点だね」

尾行している最中は一切口を開いてはくれなかったので、ようやく会話ができた。

「出てくるまでは、どれくらいかかるんでしょうか」
「うーん、今回みたいなのは、2時間か3時間くらいじゃない?」

浮気調査で「一番大事な瞬間」とは

こうやって話をしている最中も藤原は出入り口から目をそらすことはない。ずーっとビデオカメラを片手に注目している。

「まあ、本当に何が起こるかわからないよ。30分くらいで出てくる可能性だってあるし、もしかしたら明日の朝までいるかもしれないんだから」

うげぇ、先のことを考えるとつらくなってきた。

隠れながら待機できる場所を探すと、ちょうどいい場所に駐車場があったので、その看板の裏で待つことになった。回りからは死角になっているが、ホテルの出入り口を確認できる絶妙なスポットだ。

「ここからが一番大事なところだから気を抜いちゃダメだよ」

ベテラン藤原によると、ラブホテルに入る瞬間はもちろんだが、二人で一緒に出てきたところの方が大事らしい。そりゃまたどうして?

「ほら、この写真って離婚するときの裁判の材料になるから。ラブホから出てきたってのは不貞行為の一番有力な証拠になるの」

ふーん。そういうもんか。

「これが鮮明に残せれば、裁判を優位に戦えるし慰謝料の額も桁違いだよ」

なるほど、だからバカ高い金を払ってでも探偵に依頼するんだな。嫁さんの気持ちがわかってきた。