部下が直言してきたら「大人の余裕」を示す

部下が上司であるあなたに正論を直言してきたらどうでしょうか。感情的に「そんなことを言うのは10年早い!」などと怒鳴りつけたい気持ちになる方もいるかもしれませんが、大人の余裕をまずは示したいものです。

具体的には、「さすが××に詳しいA君だね」と持ち上げた上で、(正論を否定できない場合)「でもまあ今回は、これで我慢してくれよ。今後の展開の際に参考にさせてもらうよ」などのように余裕を持って軽くいなす。このように一目置く態度を見せれば、大体の場合、不満は残らないものです。

本当に採用した方が良い提案であれば、翌日少し時間を置いて「良く考えてみたんだけど、やっぱり君の言う通りにしよう」とするのが良いと思います。本書の第3章では、上司に直言する場合は批判に聞こえないように注意深く言葉を選んで意見具申する作法を紹介しましたが、あなたの部下がこうした作法を心得ずに直言してきた場合であっても、批判されたと過剰反応せずに悪意なき改善提案だと落ち着いて受け止めましょう。

「自分の方が人間的に上である」と思ってはいけない

部下の指導というのは難しいものですが、やってはいけないことは、「部下より自分の方が人間的に上である」と勘違いすることです。長年働いているとついついそう思ってしまうのが人間だとは思いますが、いうまでもなくこれは思い上がりで間違いです。実際あなたが定年などで退職すれば、その瞬間にかつての部下は部下ではなくなりますし、在任中でも例えば趣味の場では部下の方が囲碁が強いなど、立場が逆転することもあるかと思います。

ですから、あくまで仕事上の役割分担だと割り切って考えることが大事です。それでも上下関係を必要以上に意識してしまう人は、上の役職は「広い視野で」仕事を進める役割、下の役職は「狭い領域の個別の業務を着実に行う」役割などと考えてはいかがでしょう。

久保田崇『官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術』(朝日新書)
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このように強調するのは、かつて私は部下の指導がうまくできなかった経験があるからです。1つ年下の部下に対し、ある業務をしてもらおうと当然のように指示をしたのですが、なだめてもすかしてもその業務を拒否され、サボタージュされました。今思うと、上から目線で指示を出していたかもしれません。

とはいえ、その業務を部下に担当させることについては、私の上司である課長ともよく相談した上でのことですので、その判断は誤っていなかったと思います。問題があるとしたら私の指導力と人間力、そして部下の勤務態度です。この件については、課長からも同様の指示を出してもらいましたが好転せず、結局異動してもらうことになりました。後味の悪いこの事例によって指導というものを深く考えさせられましたが、他方ではどうしてもその職場にフィットしない職員については、上司や人事当局と相談した上で異動させることもオプションとして持っておくことは大事なことだと思います。

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