※本稿は、久保田崇『官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
「あの上司の下なんだ、君も大変だね」
観察するのも嫌になるくらい、あるいは「あの上司の下なんだ、君も大変だね」のように噂になっている人物の下で働くことになった場合、「今日もあの人と仕事をするなんて……」「顔を見るのもうんざり」となっても不思議ではありません。私にも経験がありますので、どんなに日々の仕事が憂鬱であるかは想像できます。
まず確認しておきますが、その上司が不正行為(法に触れる行為)やパワハラ、セクハラタイプの場合には、本書で述べたように記録を取ることをおすすめします。
ここで紹介する事例は、明確にパワハラかどうかは断定できないものの、部下を何人もつぶしてきたようなケースです。その上司は、異常に理屈っぽいタイプでした。持論は「前例どおりに仕事をすることを許さない」で、議論となると一歩も引かないので、その上司の了解を得ることに課員全員が疲弊していました。
役所は前例にないことはやりたがらないのが欠点なので、「前例どおりを許さない」のは良いことではないか、と思う方もいることでしょう。私も、安易な前例踏襲主義は慎むべきだと考えていますが、いつなんどきでも前例に従うことを許さないのは、逆に問題を生じさせます。
心を病みそうになって相談してきた同僚
例えば、何十年も続いている事業や施策は、少しずつ改善を繰り返しながら現在まで続いています。一定の効果を生み出しているからこそ、現在の形で続いていると言えるのです。それを、思いつきのような形で廃止したり改革したりすることは、関係団体や関係者に大きな混乱と迷惑を生じさせます。その上司の指示通りに物事を進めたならば、そのような混乱が生じることが明白だったのです。
特に気の毒だったのが私の同僚の課長補佐で、やや小心なところがある彼は、その上司からの度重なる指示に、心が病みそうになって私にも相談してきました。40代半ばのその男性は、私の前で涙も流さんばかりに、どうしたら良いかわからない、もう心が折れそうだと訴えるのです。私もその上司の特性は十分に認識していましたので、その男性が上司に了解を得る必要がある案件の相談のときには同席し、何かと助け舟を出すなどフォローしました。
このようなタイプは、残念ながら変わることはありません。部下として付き合い方を変えるしかないのです。以下に3つの対処法を示します。