教室マルトリートメントが生じにくい学校の雰囲気5つ

組織内に漂う雰囲気や空気感のことを、「組織風土」(organizational climate)あるいは「組織文化」(organizational culture)と言います。チームワークがよい学校では、教師同士はもちろんのこと、校内の関係者がチーム一丸となって子どもたちの成長を支えていて、そのような職員室は、自然と以下のような雰囲気で包まれたものになります。

①達成すべき目標の共有
②職員間での協力関係
③それぞれの役割の明確化
④お互いの立場の尊重
⑤前向きな内容のコミュニケーション

読者のみなさんの職員室はどのような空気感に包まれていますか(教職員以外の方が本稿をお読みになっている場合は、ご自身が過去に通っていた学校の職員室の雰囲気を思い出していただいたり、お子さまが通っている学校の職員室の状況を確認したりするとよいと思います)。

和気あいあいとしているでしょうか。ちょっとしたことでも、気軽に助け合える雰囲気ができているでしょうか。

それともピリピリとしているでしょうか。対話がなく、相手のミスやエラーを指摘し合うような苦しさが感じられる職員室になっているということはありませんか。後者のような雰囲気の職員室は、その場の居心地を悪くさせ、非常にストレスフルな職場になります。

教師の間に存在する「有無を言わせない主従関係」

以前一緒に仕事をしたことがある先生の中に、気の弱い部分がある人がいました。その人がいる学年の主任は非常に強い圧をかける教師で、子どもたちだけでなく、同僚の教師にも厳しく目を光らせる人でした。

川上康則『教室マルトリートメント』(東洋館出版社)
川上康則『教室マルトリートメント』(東洋館出版社)

心理的虐待に似たかかわりをする学年主任から子どもたちを守ろうとするあまり、気の弱いその先生は「子どもたちが学年主任に厳しく言われないように、先回りして子どもたちに圧をかける」という指導をしてしまっていたと述懐してくれました。

自分よりも立場の強い人に怒鳴られないように「私が先にやっておきました」という気持ちで子どもに圧をかける姿勢は、まるで亭主関白で厳格な父親とそれに従わざる得ない立場の弱い母親のような構図に見えます。

日本の学校には依然として、こうしたかつての「家父長制」とも呼べるような、有無を言わせない主従関係が残っている学校が少なくないように思います。特に、管理職が職員室の雰囲気を下支えするような気持ちをもっておらず、まるで全権を掌握しているかのような縦社会をつくっている場合は、極めて閉鎖的にならざるを得ない危険性をもはらんでいます。

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