トロはみそ汁の具にするしかなかった

ただし、これは赤身の話。脂身への悪しきイメージは根深く、冷蔵技術が発達した昭和初期でさえ、タダ同然で取引され、捨てられることも多かったそうです。

車浮代『江戸っ子の食養生』 (ワニブックスPLUS新書)
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江戸時代、鮪の脂身はよく味噌汁の具にされました。「日々徳用倹約料理角力取組」にも「鮪から汁」という名称が見られます。鮪のトロを使うわけですから、現代の私たちからすると、「なんて贅沢な」と感じますが、当時の人たちにしてみれば、安い脂身をいかにおいしく、臭みを消して食べるかが大事でした。そこで、味噌で煮るという調理法が用いられたのです。ただ実際のところ、から汁がどのような料理だったのか、明確にはわかっていません。

「日々徳用倹約料理角力取組」の魚類方のトップ4に鮪から汁の名称があるのですが、レシピを掲載した料理本が見つかっていないためです。このように、料理名しかわかっていない江戸料理は多く、研究者たちがそれぞれに予想し、再現することになるため、いくつかの説が出てきます。から汁の場合も、鮪のすき身の味噌汁だという説もあれば、鮪の味噌汁におからを入れているから「(お)から汁」だという説もあります。

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