アメリカでは「社員の半数が技術者」は当たり前

そこで大学教育を通じて、僕がぜひとも実現していきたいのは、技術者の価値と可能性の解放です。

先にも述べたように、どうも日本の理系人材は、文系人材につき従うという「下請け的な立場」に甘んじてきたように見える。これは技術者のほうにも、「文系の人たちが創造したものを職人的にかたちにしていく」という状況に慣れてしまったところがあるからだと思います。

伊藤穰一『テクノロジーが予測する未来』(SB新書)
伊藤穰一『テクノロジーが予測する未来』(SB新書)

技術をわかっている人が美学をもって創造すると、おもしろいものができます。「創造する文系、かたちにする理系」という構造を壊し、技術者がもっと価値を認められて、幅広い分野で能力を発揮できる社会になれば、日本の国力は確実に上がっていく。

証券会社なども、日本企業だと、技術的なことはIT企業にアウトソーシングするケースが大半ですが、アメリカの企業では、社員の半数を技術者が占めるというのが当たり前になっています。役員クラスの人がエンジニアという企業も少なくありません。

こういうところは、今後、日本も取り入れていくべきだと思います。そのためにも、やはり、まず技術者の解放からはじめなくてはいけない。

文系の人たちにもテクノロジーと仲よくなってほしい

一方、文化・社会学側からのアプローチでテクノロジーをとらえていくことも必要です。

いわゆる文系の人たちにも、よくわからないままテクノロジーを使うのではなく、ブロックチェーンの仕組みを学んだり、DAOやNFTの可能性を考えてみたりなど、文系の知見を使って、もっとテクノロジーと仲よくなってもらいたいと思っています。

テクノロジーと芸術表現を掛け合わせる、メディア・アーティストと呼ばれる人たちもいます。ストリートアートの人たちにも、テクノロジー好きの人が多いようです。そういう人たちのいろんな刺激的な活動ともあいまって、今後、日本で文系と理系の真の融合が進んでいくことを期待しています。

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