不動産業者との契約でつまずく

3カ月を無駄にしてしまった荒木夫婦。しかし、新築マンションの引き渡しまで、まだ9カ月もある……と気を取り直し、違う不動産業者を当たることにした。

新たな不動産業者は、「専任媒介契約」「一般媒介契約」の違いから丁寧に教えてくれた。前回の失敗にりた2人は、今回は一業者に限定することなく依頼できる「一般媒介契約」にすることを選択し、3社の不動産業者と契約した。

これが功を奏したのか、さっそく内見の依頼が複数きた。荒木夫婦は、ようやく部屋を見てもらえると安堵した。

売れそうで売れない原因は“旧耐震基準”

1件目にやって来たのは、30代のA夫婦だった。

日下部理絵『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)
日下部理絵『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)

子どもがまもなく小学生で、居住中の賃貸物件が手狭になったため、マンションの購入を考えているという。

内見では好感触だったが、後日不動産業者に聞くと、「部屋の広さ価格ともに申し分ないのですが、駅からちょっと遠いのと、最近地震が多いことからマンションが“旧耐震基準”(*)であることを気にしていた」と言う。

旧耐震基準:1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準のこと。震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準として設定されている。

荒木夫婦のマンションは最寄り駅から徒歩9分。周辺にライバルとなる築浅マンションが増えているのも要因になったのか、残念ながら結局見送りとなった。

引っかかるポイントはいつも同じ

2件目の内見は、やはり30代のB夫婦だった。B夫婦も、旧耐震基準であることと、住宅ローン控除が受けられない(*)こと、マンション全体の修繕積立金残高が少ないことを気にして、見送りとなってしまった。

*築25年超のマンションは、住宅ローン控除に「耐震基準適合証明書」の取得が必要。荒木夫婦のマンションは適用外だった。

その後も何件か内見に来たが、みな同じような反応である。

そうこうしているうちに、あっという間に3カ月が過ぎた。売却を進めないことにはどうにもならない。荒木夫婦は3社と一般媒介契約の更新をした。

新築マンションの引き渡しまであと半年──。そこで、追加でさらに別の不動産業者2社とも一般媒介契約をすることにした。これで、物件を5社で売りに出していることになる。

するとまた、新規の不動産業者2社経由で、内見の依頼がきた。それでも結果は同じだった。駅からの距離や、旧耐震基準、住宅ローン控除が気になる、という。