施設に入所してしまえば、そこが住まいになるが、短時間、短期間の利用では自宅との行き来が当然発生する。そこで、日常生活の延長線上で快適に利用できるサービス利用という視点が必要になってくる。利用者に対して均一のサービス提供ではなく、個々人への対応力に優れたサービス事業者を選びたい。
30年以上高齢者介護の現場で活躍している社会福祉法人伸こう福祉会の片山ます江専務理事は、そのためにサービス事業者に対する具体的な働きかけが必要であると指摘している。
「自分の父、母のお世話をゆだねるのですから、これまで親がどんな暮らしをしてきたのかをきちんと伝えることです。生活習慣や好き嫌いを話して、そのサポートのために働いてくれるのか確認するくらい、強く要望を出さないと伝わりません」
個人の尊厳を尊重して、安心、安全のサービス提供を心がけるなどといった理念は、今どき、どの介護事業者も掲げている。傲慢な言い方かもしれないが、サービス利用者への個別対応の有無を確認するだけでも事業者選びの失敗の確率を低減させることができる。
※すべて雑誌掲載当時
依田 平●ケア21社長
1993年、大阪に学習塾「ヨダゼミイースト」設立。99年ケアにじゅういち(現ケア21)に商号変更。在宅介護ステーション、有料老人ホーム、グループホーム、デイサービスを運営。その拠点は100ヵ所を超える。
片山ます江●伸こう福祉会 専務理事
大阪府出身。1986年、第一号老人介護施設「グラニー鎌倉」オープン。98年、サービスの質向上を追求し介護施設では初めてのISO9001を取得。以後、グループホーム、特養、ショートステイ、デイサービス施設、認可保育園を設立。
(永井 浩=撮影)