「アフガン領土をテロ組織に使わせない」というドーハ合意

このように、ターリバーンとAQは事実上関係を今日まで維持しており、テロの脅威を過小評価することはできない。最近まで、アフガニスタン国内では、イスラーム共和国治安部隊の軍事作戦により、AQの属州「インド亜大陸のAQ」幹部のアブー・モフセン・ミスリー殺害(2020年10月)や、アブー・ムハンマド・タージキー殺害(2021年3月)をはじめ、多数のAQ構成員の殺害が確認されてきた。

AQ構成員の中には対ソ連戦以来、アフガニスタン国内に留まって現地の女性を娶り、現在まで生活を続けているものも少なからずいる。したがって、両者の関係断絶は容易でなく、また根深い問題である。

とはいえ、ターリバーンは2020年2月29日にアメリカと締結したドーハ合意に基づき、国際テロ組織にアフガニスタンの領土を使用させないことを明言している。バイデン大統領就任後の2021年2月16日にターリバーンが発出した「アメリカ国民への公開書簡」には、こうある。

青木健太『タリバン台頭』(岩波新書)
青木健太『タリバン台頭』(岩波新書)

アフガニスタン・イスラーム首長国は、アフガニスタンの領土を他国の安全を脅かすために使わせないことを公約した……(中略)……ドーハ合意締結から1年が経った現在、我々がアメリカ側に求めることはドーハ合意の遵守である。

(Emārat-e Islāmī-e Afghānistān, Sedā-e Jihād, February 16, 2021)

ターリバーンはこれ以外にも、ドーハ合意を遵守する立場を声明において繰り返し主張している。こうした背景には、アメリカ軍の撤退を2021年5月に控える中で、アメリカに合意を反故にさせないようにしたいという思惑もあっただろう。

しかし、ターリバーンによる実権掌握後も、「アフガニスタンの領土を他国に危害を加えるために使用させない」「ドーハ合意を遵守する」「他国の内政に干渉する意図はない」といった発言は、ターリバーン幹部から幾度も述べられてきた。したがって、ターリバーン指導部は、少なくとも表向きは、ドーハ合意遵守を貫くと考えられる。

表向きはテロ対策を講じると主張しているが…

国連安全保障理事会に提出された2021年7月のモニタリング報告書によれば、AQはアフガニスタン15州で活動を続けており、「インド亜大陸のAQ」はターリバーンの庇護の下で南部カンダハール州、ヘルマンド州、およびニムルーズ州にて活動しているという。

また、同報告書によると、ETIM(東トルキスターン・イスラーム運動)はAQと連携し、数百人の戦闘員を擁しながら、北東部バダフシャーン州や北西部ファーリヤーブ州に潜伏している。同年8月下旬には、AQ幹部が東部ナンガルハール州に戻る様子が、ソーシャルメディア上で流布した。AQは、アフガニスタンに依然として潜伏していると見て間違いない。

ターリバーンは表向きはテロ対策を講じると声高に主張している。しかし、アフガニスタンを国際テロ組織の潜伏地とするようならば、外部者からターリバーンとAQは同一のものだと認定されても弁解の余地はない。アフガニスタンが再び「テロの温床」となるか否かは、ターリバーンが言行を一致させられるか、にかかっている。

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