繰り上げと違い、繰り下げには選択肢が多い
繰り上げ受給は老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に行わなくてはなりませんが、繰り下げは別々でもかまいません。
たとえば、在職老齢年金の支給停止基準を超えている場合、停止になった年金については、繰り下げても増額されませんので、老齢厚生年金は受け取って老齢基礎年金だけを繰り下げるという選択肢があります。
また、老齢厚生年金に加給年金(※8)が付く場合、繰り下げ期間中は加給年金を受け取ることができず、繰り下げによって加給年金の額が増えることもありません。そのような場合も、老齢基礎年金だけを繰り下げることを検討します。
※8 扶養する子どもや配偶者がいる場合に支給される年金
夫婦単位で「年金受給プラン」を考える
配偶者がいる場合、夫婦単位で年金受給プランを考えることが大切です。夫婦ともに仕事をもっているケースでは、それぞれが「いつまで」「どのように」働いていく予定かといったことをすり合わせ、お互いの年金履歴を参照しながら、繰り上げや繰り下げというツールを有効活用できるよう話し合ってください。
一方、妻が家事や育児を担っていたために厚生年金加入期間が少なく、ほぼ老齢基礎年金しかないというケースを考えてみましょう。
専業主婦やパートの妻も「65歳まで働き切る」戦略は有効です。短時間でも厚生年金が適用になる企業で働き、年金額を増やします。事情が許すのであれば、フルタイムで働くことで、年金額のさらなるアップが目指せます。そうして、60歳から65歳までは2人の収入で乗り切ります。
女性は男性より長生きする可能性が高いですから、併せて、繰り下げ受給が有効な選択肢となります。
ここで紹介したケース以外にも、さまざまなパターンがあると思いますが、たとえ思惑が外れたり、予定外のことが起こった場合でも、そうそう悪いようにならないプランにしておくことが大切です。
「できるだけ長く働いて年金を繰り下げしないと老後資金が不足するかも」とか「いつまで働けば安心なのか」など、時間軸が定まらないと不安と迷いの沼から抜け出せません。長生きするかしないかは誰にもわからないので、「65歳まで働き切る」戦略で、一つひとつできることから実行していきましょう。