このペースでは訪日客が3000万人に戻るのは数年後

経済再生の遅れは国民生活にボディーブローのように効いてくるが、国民がそれを実感する頃には政府も体制が変わっている。あえて今、リスクを取って経済を回す必要性を政治家が感じていないということなのだろうか。10数組のツアー受け入れは、岸田首相お得意の「やっているフリ」に近い。6月からの解禁規模は示されていないが、このペースではかつての3000万人に訪日客が戻るのは数年先になってしまう。

「Go To トラベルも再開していないのに、外国人観光客を受け入れるのはけしからん」という意見もある。Go To トラベルにせよ、外国人観光客受け入れにせよ、再開するのなら、一気呵成かせいに徹底して行うべきだろう。再開したり、またまた取りやめたりを繰り返していては、経済の波及効果は小さくなる。事業者の声に答えるポーズにはなるが、経済再生の「切り札」が空振りに終わりかねない。

日本の財政を考えれば、予算が無尽蔵にあるわけではない。Go To トラベルにしても使う予算の何倍もの消費を生み出すこと、つまり、旅行に出た人たちに、財布の紐を緩めてお金を使ってもらわなければ意味がない。観光業者の支援策ではなく、あくまで景気対策としてGo To トラベルを位置付けるべきだ。

活気あふれる清水寺の参道
写真=iStock.com/urbancow
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フランス並みの「観光国」になれる可能性がある

だが、景気後退で庶民の財布の紐はおそらくかたくなる一方だろう。円安によって輸入品だけでなく、電気代やガス代、交通費などが大幅に上がっていけば、生活防衛から他の消費を抑えなければならなくなる。真っ先に旅行などが削られることになるだろう。Go To トラベルには、一部の高齢者など時間と資金に余裕のある人たちの旅行費用を肩代わりしていて不公平だ、という指摘もくすぶっている。ますます旅行できる人とできない人の格差が広がる中で、そうした不公平感がさらに拡大していく可能性もあり、政策として難しくなってくる。

今後も円安が進むと考えれば、インバウンド消費は最大の切り札だ。新型コロナが完全に終息し、入国制限が撤廃されれば、日本への旅行は間違いなく一大ブームになる。3000万人来ていた2019年よりも大幅に円安が進んでいるからだ。あっという間に5000万人が押し寄せる時代がやってくる。新型コロナ前のフランスは、年間7000万人以上の旅行者が訪れる世界最大の観光国だったが、日本がその地位を奪う時が来るかもしれない。そのためには、どこかのタイミングで、政府がリスクを取って腹をくくり、外国人観光客受け入れを全面的に解禁することが重要になる。

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