感染対策と経済再生を同時に行おうとしている
政府は6月から外国人観光客の入国受け入れを再開する方針を示した。ついに新型コロナウイルス蔓延のリスクを取ってでも、経済再生を優先する姿勢に舵を切ったのかと思いきや、どうもそうではないらしい。感染対策優先なのか、それとも経済再生優先なのか。またしてもどっちつかずの政策に終始しそうだ。
5月17日、斉藤鉄夫国土交通相は閣議後の記者会見で、外国人観光客受け入れ再開の「実証事業」を5月中に行うと発表した。米国、オーストラリア、タイ、シンガポールの4カ国から、ごく少人数の団体客を受け入れるという。対象は10~15ツアーとしているが、読売新聞オンラインは「計50人程度」と報じており、感染拡大リスクがどの程度大きくなるかという「実証」ではなく、役所が検討している「旅行会社による行動管理」がうまくいくかの「実証」なのだろう。6月以降、ワクチンの3回接種や民間医療保険に加入した団体客を入国させる方向だが、感染対策と経済再生を同時に行おうということのようだ。
そろそろ経済再生に本腰を入れないと打撃が大きい
つまり、経済再生のためには多少のリスクは仕方がない、と政府が腹をくくったわけではないのである。新型コロナの「第6波」は感染者数が第5波を大きく上回る最悪の感染拡大となったものの、重症化率や死亡者数の割合は小さく、医療も逼迫することはなかった。
経済再生に一気に軸足を移す決断をするなら、それはそれで政治判断だし、支持する国民も少なくないに違いない。というのも、そろそろ経済再生に本腰を入れないと、世界の中で日本だけが新型コロナ禍からの経済再生が大きく立ち遅れることになりかねない。新型コロナに加えて、世界的なインフレや、ウクライナ戦争、そして円安と、日本経済を襲っている打撃はますます大きくなっているからだ。
空前の物価上昇に見舞われている米国は、FRB(連邦準備理事会)が量的緩和政策を転換し、金利引き上げに動いている。徹底的にインフレを抑制するという姿勢を明確にしている。米国のインフレは新型コロナによる経済凍結の反動から一気に消費が盛り上がったことが大きな要因だ。猛烈に景気が良いことを背景に物価が上昇した。