休憩中は手のひらを水で冷やすのがおすすめ

こまめな水分・電解質の摂取、適度な休憩以外にも部活動中にできる熱中症対策はあります。その一つがウェア選びです。吸汗速乾性に優れた素材のものを選べば、ウェアと体の間に熱がこもるのを防いでくれます。帽子を被って頭部を直射日光から守るのも、有効な対策です。

中野ジェームズ修一『子どもを壊す部活トレ』(中公新書ラクレ)
中野ジェームズ修一『子どもを壊す部活トレ』(中公新書ラクレ)

休憩中に水や氷で体を冷やすのも良いでしょう。首や脇などを冷却するのも良いですが、おすすめは手のひらを水で冷やすことです。

手のひらにはAVA(Arteriovenous Anastomoses:動静脈吻合ふんごう)と呼ばれる血管が通っています。AVAは、体温調節を仕事としている血管で、動脈と静脈をバイパスのように結んでいます。体温が上がってくると、このバイパスが拡張し、熱が逃げやすい末端に血液を運びます。反対に体温が下がってくると、AVAは収縮し、末梢への血流を減らし、そこから熱が逃げるのを防ぎます。体の中心部の体温、中核温を維持するために、AVAが閉じられるということです。

外気温が高く、体温が上がってくるとAVAは拡張します。このとき、手のひらを冷やすと効率よく熱を逃がして体温を下げられるというわけです。首や脇よりもAVAがある手足を冷やした方が、効率的に体温が下がるという研究報告もあります。

熱中症リスクを小さくする5つのポイント

手のひらを冷やす際、気をつけるのは冷た過ぎるものを使わないということ。冷刺激が強過ぎると、AVAが収縮してしまうからです。血管収縮を発生させず、効率よく体温低下に結びつく温度帯は12~15℃だとされています。

水を入れたバケツに手を入れる、水を入れて冷やしておいたペットボトルを握るぐらいが適切です。最近はこのAVAに注目して作られた、手のひらを冷やすための蓄冷剤も販売されています。

暑い日は無理をしない。体調が悪いときは練習を休む。こまめに水分と電解質を補給する。帽子や機能的なウェアを活用する。休憩をこまめにして体を冷やす。これらを徹底することで、熱中症のリスクはかなり小さくできるはずです。

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