ネット利用者保護より「金儲け」が優先される日本

ネットの利用者情報が広告会社などさまざまな事業者に垂れ流しになっている事態を規制しようとする初めての法案が、今国会で成立する運びだ。

2022年4月28日、繰上げ閣議に臨む岸田文雄首相(中央)ら=首相官邸
写真=時事通信フォト
2022年4月28日、繰上げ閣議に臨む岸田文雄首相(中央)ら=首相官邸

だが、当初、総務省や有識者が描いた利用者保護の枠組みは、土壇場になって、利用者のデータを使って「金儲け」に奔走するIT企業や応援団の自民党の猛反発で「骨抜き」となり、「保護」より「カネ」を重視する形ばかりの規制策となってしまった。

利用者保護の強化は世界的な潮流で、欧州や米国ではIT企業への締め付けが一段と強化されつつある。それだけに、日本でも、利用者保護に向けて、初めて本格的な規制がかけられると期待されたが、「大山鳴動してネズミ一匹」のお粗末な結果になり、日本の利用者を守るネット政策は世界の周回遅れになってしまった。

接待問題で主要官僚が一掃…雲散霧消した経済界や自民党とのパイプ

実は、そんな顚末てんまつになった遠因は、1年余り前に総務省で起きた前代未聞の一大接待事件にあった。

次期事務次官を有力視された谷脇康彦総務審議官以下、これまで情報通信政策を担ってきた主要官僚が軒並み事件に関与して総務省を去ったため、経済界や自民党を水面下でつなぐ人脈が枯渇してしまっていたのだ。

後任に座ったのは、接待事件とは無縁で、通信・放送事業者との癒着が懸念されそうにない面々ばかり。だが、それは、長年にわたって培ってきた経済界や自民党との太いパイプが雲散霧消してしまったことも意味する。

その悲喜劇が、ネット利用者の保護をめぐって、ビジネス優先のIT業界に寄り倒されてしまう「大失態」を生んだといえる。