「久郷博士に騙されたのがきっかけだった」

橋本が逮捕されたきっかけは、A子さんとの些細なトラブルだった。A子さんが海外旅行の土産として、橋本にハチミツをプレゼントしたところ、「食べた従業員が食中毒を起こし、入院した。見舞金がいる」と言われ、66万円を要求された。その後、「従業員が死亡した。香典がいる」と言われ、さらに77万円を渡した。

A子さんは「その方の遺族に会って、一言お詫びがしたい。連絡先を教えてほしい」と頼んだが、橋本はその従業員の名前すら教えようとしなかった。

A子さんは不信感を募らせ、「株主をやめさせてほしい」と言ったが、解約を断られ、金も返してもらえなかった。

そこで警察に相談。ここから一連の詐欺行為が発覚し、橋本に妻子がいることも判明した。警察がA子さんに対する詐欺容疑で摘発に行った際、橋本の自宅から大量の「宝永石ミネラル」が見つかった。

橋本は3人の女性に対する詐欺容疑はもとより、薬事法違反容疑でも逮捕された。妻は激怒して離婚を言い渡したが、橋本は「自分も被害者だ」と訴えた。

「元はと言えば、久郷博士のセミナーに出席し、騙されたのがきっかけだった。みのもんたの『おもいッきりテレビ』(日本テレビ系列)に出ている映像などを見せられて、頭から信じ込んでしまった。私を摘発するなら、その人たちも摘発してほしい」

演説をするビジネスマン
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです

だが、裁判所は「悪質な詐欺行為を正当化する理由にはならない」と断罪し、橋本に懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡した。

150冊以上の本を監修していた久郷晴彦という人物

警察は橋本が読んだという本をもとに久郷のことも調べたが、架空の経歴の人物であることが分かった。

だが、久郷監修による本は150冊以上もあることが判明。『サメの軟骨がガンを撲滅する!』『気がつけばメシマコブでガンが消えていた!』『ガンは生プロポリスで治る!』『ガン、ボケはヤマブシタケが治す』『奇跡の健康フルーツ「マンゴスチン」』など、数カ月に1冊のペースで本を出版し、その都度セミナーを開いて、特定の健康食品を売りさばく。しばらくすると、連絡先は音信不通になり、また別の本を出版する。典型的な“バイブル商法”だ。

多くの食の専門家は、「どんなに栄養的に優れた食品であっても、それを食べるだけで、それまでの不摂生が帳消しになるようなものは存在しません」と断言している。