不良在庫を売りさばくために結婚詐欺を仕掛ける

橋本はそれを売りさばくために、自らが「東大出身の医師」にふんし、出会い系サイトで再婚相手を探す40代の女性たちにターゲットを絞って、結婚詐欺を仕掛けていくことになった。

〈私は東大卒の外科医でしたが、自分の仕事を優先するあまり、妻の病気にも気付かず、先立たれてしまいました。その懺悔から私は医師をやめ、人間の自然治癒力を高めるための研究に没頭し、現在は健康食品会社を経営しています。残りの人生の伴侶として、お付き合いくださるような同世代の女性を探しています〉

この書き込みに興味を持ったのが、小学校講師をしていたA子さん(44)だった。A子さんは夫と死別し、小学生の娘を一人で育てていた。

「あなたなら私の苦しみを分かってくださるかもしれませんね。妻は子どもを授かることを望んでいたのに、私はその望みさえ叶えてやれなかった。あなたの子どもを自分の子どもだと思って大切に育てていきたい」

A子さんはこんなふうに言い寄られて、橋本と結婚前提で付き合うことになった。

3人の女性から騙し取った金額は1500万円以上

「結婚する人には自社株を持ってほしいんだ。必ず儲かるから、株主になってくれないか?」

その後、A子さんは橋本の言いなりになり、カードローンを組んだり、娘の預貯金を取り崩すなどして、1000万円以上も貢ぐことになった。

それと同時に並行して付き合っていたのが、キャリアウーマンのB子さん(43)だった。「生活には不自由させない」「子どもを産んでほしい」などと言い寄り、B子さんの年老いた両親にも会った。

その場で自分が販売する「宝永石ミネラル」をすすめ、病に苦しむ知人のお年寄りたちを紹介させ、次々と「宝永石ミネラル」を売りつけた。

B子さんは勤務先にも橋本を紹介し、「宝永石ミネラル」の販売に一役買ったほか、自らも「乳ガン検査キットの販売権を買収した。必ず儲かるから、権利を買ってほしい」などと持ちかけられ、計350万円を騙し取られていた。

別の会社員のC子さん(46)も同じように口説き落とされ、計150万円を支払わされていた。