だからこそ、つくり手のポテンシャルを見極め、いかに自社に引き込むかがバイヤーである社員の手腕にかかっている。つくり手の思いに迫り、ものづくりの苦悩を分かち合い、探求やまない好奇心と意欲を社員に求めていくことは、従来の「人材育成」の考え方だけでは導き出すことができない難問。地域に愛される“高質な”小売店を残していけるかどうかの肝は、生産者との信頼関係の構築に、社内からどれだけの運動量と熱量が生まれてくるか、勝負の分かれ目はまさに、この一点にある。
“ちむどんどん”な沖縄らしさを取り戻す
米国型の暮らしを先取りした沖縄には、その結果現れた課題も先行して山積している。「世界一の長寿」はなだれ落ち、肥満県トップ、食料自給率は低水準の全国平均37%からさらに10ポイント低い。
破壊された島の環境を耕しなおし、食料、エネルギーの自給率を高めていく営みそのものが、この島嶼に生き、訪れる者を豊かにし、未来の賢明な消費者を育てる「原風景」をつくることにつながる。
自ら“琉米文化”を織り成したリウボウとプラザハウスには、時代承継に耐えうる社会像を描く義務がある。沖縄の復帰前後の熱を根っこに宿した経営トップだからこそ手掛けられる、一世一代の変革。糸数社長、由乃社長には、常に視界に世界市場をとらえ、英語が堪能という共通点もある。
2人が両輪となって、空になった「黒船」の戻りコンテナにどんな沖縄を載せるのか。その鍵は、かつて思春期に「沖縄のことがとにかく自慢だった。マイナスなんて、ほとんど感じたことはなかった」と胸がわくわくした気持ち、“ちむどんどん”に、ヒントがあるのかもしれない。