「共通の興味」からコミュニケーションが生まれる

そしてもう一つ、何かの世界にのめり込むと、そこにはかならず先輩や同好の士がいて、必然的にコミュニケーションが生まれます。

例えば当時よく話題になりましたが、スケートボード競技が異色なのは、プレーヤー全員が“仲間”であるところ。一人が難しい技に成功すれば、国籍とは関係なく全員が拍手をして喜ぶ。あるいは失敗すれば慰める。本来は競争相手のはずですが、ライバル心をむき出しにして競い合う様子はまったく見られませんでした。

むしろ、戦う相手は自分自身。“仲間”の声援と賞賛があるから、より難しい技にチャレンジしようというモチベーションも湧きやすいのでしょう。たいへんすばらしい競技のあり方だと思います。

見方を変えれば、四十住選手はスケートボードの技を極めることによって、世界中に友人を作ることができたわけです。このプロセスも、私たちはおおいに見習うべきでしょう。

スケートボード
写真=iStock.com/lzf
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例えば、囲碁や将棋に興味を持って碁会所や将棋道場に通うのもよくあるパターンです。そこには小学生や中学生の上位者がいて、大の大人が簡単に負けてしまったり、教えを請うたりする。一般社会ではなかなか見られない光景です。

また私のクルマ好きの知人は、その趣味が高じて同好会のようなものを作ってしまいました。彼らは集まると、ひたすらクルマの話をして飽きることがないらしい。誰かが新たにクルマを買うと、「納車式」と称して盛り上がったりするそうです。少々子どもっぽい盛り上がり方が楽しそうです。こういうコミュニケーションの楽しみが日々の充実感や幸福感につながることは間違いないでしょう。

イーロン・マスク氏の言動を追いかけるだけでも楽しい

あるいは仲間とまでは行かなくても、同時代を生きる特異な人物に注目し続けるのも面白いかもしれません。

例えば今、その一挙手一投足が何かと話題になる経営者といえば、テスラのイーロン・マスクCEOでしょう。同社は単なる電気自動車のメーカーではありません。太陽光発電や蓄電、充電、システム管理などを一括して担うエネルギー供給会社の大手でもあります。

また、周知のとおりマスク氏は宇宙開発企業スペースXのCEOでもあります。氏の構想によれば、2050年までに火星に100万人都市をつくるとのこと。まったく夢物語のようにも思えますが、そうではありません。同社は今後10年で1000機の宇宙船を建造する計画を立てているそうです。

実現するかどうかはともかく、こういう構想を練る人物が同時代に存在しているだけで面白い。だいたい2050年といえば、マスク氏自身も存命かどうか微妙なところでしょう。それでも構想してしまうところに、壮大な社会性を感じます。その進捗とともに、次の言動を追いかけるだけでも十分楽しめるのではないでしょうか。

ラッセルは以下のように強調しています。

〈あなたの興味をできるかぎり幅広くせよ。そして、あなたの興味を惹く人や物に対する反応を敵意あるものではなく、できるかぎり友好的なものにせよ〉

シンプルで説得力のあるメッセージだと思います。