巨額の予算を使って、今やるべきことなのか
そうした人々の意識の変化、新型コロナウイルスとの向き合い方の変化が起きている中で、県民割やGo To トラベルをやる必要性があるのか、という問題もある。県民割がなかったら旅行をしないのか、という疑問点だ。しかも、それを巨額の予算を使ってやるべきなのか、である。過度な財政支出をすれば、それはいずれ増税などの形で国民負担に戻ってくる。そのツケを払わせられる時には、当然、景気の足を引っ張ることになるのだ。
もし、政府が、もはや新型コロナの蔓延を抑え込むよりも経済対策が重要だとの結論に達したのならば、一気に景気対策として「起爆剤」のGo To トラベルを実施するのもいいだろう。だが、それはあくまでも「起爆剤」として使うべきで、何度も実施しては蔓延拡大で中止し、また再開を繰り返すというような使い方はしてはならない。それをやると、結局、Go To トラベルという第2の助成金に依存する業者が増えていくことになる。
業者救済ならインバウンドを受け入れるべきだ
今、日本は猛烈な円安に直面している。旧来型の製造業経営者などはいまだに「円安はプラス」と言っているが、明らかに輸入物価の高騰が続き、庶民の暮らしはどんどん悪化する。内需型のサービス産業が多い日本では円安になっても給与が増えるわけではないので、輸入物価が上がれば、代わりに他のものの消費を諦めることになるだろう。真っ先に削られるのが旅行や外食かもしれない。Go To トラベルをやってもそれに伴って使うお金が減れば、政策の経済波及効果も小さくなっていく。
確実に言えることは、円安で外国人観光客にとっては日本がパラダイスになっていることだ。業者を救済するのならば、今はまったく受け入れを止めている外国人旅行者に門戸を開くことだろう。大挙して観光客が訪れ、お金を落としていく。この時、日本の事業者はいかに外国人にお金を落とさせるか、考えればいい。宿泊料をドル連動で引き上げて行っても、日本の物価は安いので、旅行者にとっては割安な旅行先に見えるはずだ。
円安で確実に貧しくなっていく日本人に旅行させるGo To トラベルよりも、外国人観光客に一気に門戸を開くことの方がはるかに大きな経済対策になるだろう。コロナと共に生きていくのなら、そうやって日本が稼いで、医療体制が崩壊しないようにヒト・モノ・カネを医療分野に注ぎ込んでいくことを考えるタイミングに来ているのかもしれない。