デイ・サービス(通所介護)は要介護状態にある高齢者が通い、入浴、排せつ、食事などのお世話を受けつつ、機能訓練を日帰りで行う施設。だが今、高齢者自身が洗車や弁当作りといったサービスを提供する活動をする施設が話題だ。フリーライターの相沢光一さんが埼玉県の施設を取材した――。
後方中央の男性が運営代表者(社長)の阿部さん。その右前が南雲さんは。右端が102歳の下出さん
撮影=相沢光一
後方中央の男性が運営代表者(社長)の阿部さん。その右前が南雲さん。右端は102歳の下出さん。

要介護者=お世話される人ではない“すごい仕掛け”

埼玉県上尾市にユニークなデイ・サービスがある。

高齢の利用者などがボランティアとして仕事ができる場を提供しているのだ。名称は「アクティブキッチン一歩」。“キッチン”という名が示す通り仕事は弁当づくりである。

デイ・サービスを利用しているのだから、ここに参加している人は要介護者だ。「要介護者が仕事?」と思う人もいるだろうが、「そう決めつけること自体、よくないと思うんです」と語るのがこの事業所を運営する阿部裕一さん(50)だ。

「要介護者は家族や介護職員から“お世話をされる人”と思われています。でも、なかには、そこに甘んじていられない人もいらっしゃるんです。まだまだ自分はできる、世話されるだけの存在にはなりたくない、と。そんな方の思いを満たすには何が必要か、と考えた時、頭に浮かんだのが働く場でした。働くというのは誰かのためになることであり、役割が与えられ自分が必要とされることでもある。それは喜びや生きる活力につながると思うんです」

通常、デイ・サービスの利用者は受け身の存在だ。朝、時間がきたら職員が迎えに来て、施設に着いたら健康チェックや体操などをする。お昼になれば食事をし、午後は入浴やレクリエーションなどをして夕方になると帰宅する。

事業者が決めたスケジュール通りに与えられるサービスに身を任せていればいいわけだ。もちろん、これに満足する人もいるだろう。が、「それとは違う喜びを求めている人もいる」と阿部さんは言うのだ。