プーチンはゼレンスキー政権とは和平を結ばない

トルコメディアが4月2日に、ロシアとウクライナの大統領会談が近くトルコで開かれる可能性があると報じたほか、ゼレンスキー大統領が4月4日にキーウ近郊の町ブチャを視察した際に、「これは大量虐殺だ」「ロシアが停戦交渉を長期化させている」として、プーチン大統領との直接会談を求めています。

しかし、アメリカの利益代表者であるゼレンスキー政権を打倒することが、ロシアの安全保障上不可欠だと確信を深めたプーチン大統領は、ゼレンスキー大統領との会談は行わないでしょう。

この先、東部方面での攻勢をさらに強めていくと思います。その先でウクライナと和平を結ぶとしても、ゼレンスキー政権ではなく次の政権と結ぶ。あるいは、ゼレンスキー退陣を締結の条件にするでしょう。

バイデン大統領が熱を込め過ぎて発した発言が、かえってゼレンスキー政権を追い詰めることになっているのです。

バイデンよりトランプのほうが現実的だと思い始めたアメリカ人

今回の戦争で、アメリカやドイツの軍需産業は潤っています。型落ちの兵器や旧東ドイツ製兵器の在庫を整理するのに、いい機会だからです。

しかしアメリカ世論の関心事は、ウクライナ問題よりも圧倒的に、ロシア産原油の禁輸がもたらしたガソリン価格の高騰です。米コネチカット州のキニピアク大学が3月30日に発表した世論調査では、アメリカが現在直面している緊急課題として、1位が「インフレ」(30%)で、「ロシア・ウクライナ問題」(14%)を大きく上回っています。

2012年のテキサス州デル・リオのメインストリート
写真=iStock.com/M. Kaercher
※写真はイメージです

3月下旬にレバダセンターが行った世論調査では、プーチン大統領の支持率は83%と、4年ぶりに80%を超えました。それとは対照的にバイデン大統領の支持率が40%となり、就任後最低を更新しているのは、経済対策への不満によるものです。

こうなると、トランプイズムの再来です。トランプイズムとは、自国が第一で、世界の警察官の役割はしないこと。シリアとアフガニスタンから手を引き、中国と対決姿勢を取り、ロシアとは事を構えないという外交姿勢です。

西側の同盟国がロシアと代理戦争を行い、結果として中国とロシアを近づけ、北朝鮮はその隙にアメリカ本土まで届く大陸間弾道ミサイルを撃ち上げている。こんな国際情勢で、本当にアメリカはいいのか。3月3日公開の記事で、もしもアメリカがトランプ大統領のままなら、ロシアのウクライナ侵攻は起こらなかったと述べましたが、やはりトランプのやり方のほうが現実的ではないか、と感じるアメリカ人は一定数います。

事実、ハーバード大学の研究所などが3月29日に発表した世論調査で、次の大統領選挙がいま行われた場合、「トランプ氏に投票する」と答えた人は47%。バイデン氏と答えた41%を上回りました。