各局とも、民放公式テレビポータル「Tver(ティーバー)」をプラットフォームとして活用し、無料で配信。「Tver」のトップページでテレビ局を選択し、見たい番組を選んで視聴する。
ラインナップは、午後7~11時の「プライムタイム」を中心に、視聴率の高い人気番組がズラリと並ぶ。
一足先の21年10月にスタートした日本テレビは、「日テレ系ライブ配信」と称し、「ザ!鉄腕!DASH!!」や「世界の果てまでイッテQ!」などの人気バラエティーや「名探偵ホームズ」などのドラマを毎日、「同時配信」している。
杉山美邦社長は「デジタルで見た視聴者が、テレビもさらに視聴し、回帰してもらうという効果を期待している」と語り、「デジタル分野での取り組みを加速させる」と力を込める。
先行するNHK、世界では同時配信が当たり前
「同時配信」は、通信ネットワークを利用するので、ネットがつながる場所であれば、いつでもどこでも見られるという利点がある。今や必需品のスマホがあれば、「テレビ」がなくてもテレビと同じように番組を見られるというわけだ。しかも、Wi-Fi環境であれば、コストはほとんどかからない。
放送波を利用する「ワンセグ」が、電波が届きにくい屋内や地下では視聴しづらいのに比べると、利便性は格段に高い。
海外では、イギリスのBBCが08年に「同時配信」を開始して以来、米国、フランス、ドイツ、韓国など多くの国が、相次いで導入。世界の潮流は、番組を視聴者に届ける手段として、「ネット」を活用した「同時配信」が欠かせなくなりつつある。
こうした流れを受けて、NHKは20年春、東京オリンピックに照準を合わせ、受信契約世帯向けに「NHKプラス」を開始した。
総合テレビとEテレの番組を、ほぼ終日、「同時配信」し、合わせて「見逃し配信」(1週間分)のサービスも提供している。パソコン、スマホ、タブレット、スマートテレビなど、大半のデバイスで利用できる。
NHKの業務報告によると、21年9月末で約3700万件の受信契約世帯のうち利用申請数は231万件となった。
「見逃し配信」に固執した民放
これに対し、民放各局のネット配信は、これまでドラマなどを中心に番組放送後1週間無料で提供する「見逃し配信」を、翌週以降の「テレビ」での視聴につなげる狙いで展開してきた。
ドラマなどは、必ずしもリアルタイム視聴にこだわらない人が少なくなく、録画によるタイムシフト視聴が定着してきたこともあって、「見逃し配信」は一定の利用者を確保するようになってきた。
だが、「同時配信」となると、事情が変わる。
ニュースやスポーツなどリアルタイムで視聴することに価値を生み出す番組にこそ、圧倒的に強みがあるからだ。
「同時配信」のニーズは、「見逃し配信」とは決定的に違うのである。