フューチャーセンターを始めるということには、2つの意味があります。一つは、フューチャーセンター・セッションを企画し、人を集めて対話の場を持つこと。もう一つは、フューチャーセンターという場所や機能を立ち上げて、様々なテーマが持ち込まれるような、持続的な仕組みを作ることです。

野村恭彦●イノベーション・ファシリテーター。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)主幹研究員。富士ゼロックス株式会社 KDIシニアマネジャー。K.I.T.虎ノ門大学院ビジネスアーキテクト専攻 客員教授。 ©Eriko Kaniwa

もちろんこれら2つは、まったく別のものというわけではありません。同時に計画されることもあります。しかし、セッションの質をあなた自身の「個人技」頼みにしないためにも、後者の、「フューチャーセンターの持続的な仕組み」の設計が重要になります。そのためには、様々なテーマについて、他の人がファシリテーターになっても原則が守られるよう、空間やツール、プロセスなどを設計することが必要です。

「フューチャーセンターの持続的な仕組み」を設計すると言っても、フューチャーセンターを運営する「組織」の設計と、フューチャーセンターという「場所」の設計という2通りがあります。これら両方が一貫した設計がなされ、同時に立ち上がることが理想です。

「組織」としては、フューチャーセンター・ディレクターという、センターの「経営者」が必要です。この人がテーマの選定、セッションの企画・運営、そして収支の責任を持ちます。ファシリテーターは専任でも外部委託でも構いませんが、テーマに応じて、適切なファシリテーターをスピーディに見つけることができなければなりません。

ファシリテーターには、問題解決能力の高いコンサルタントタイプ、傾聴・対話などの関係性構築の方法論に強いコーチングタイプ、対話の内容をその場でグラフィックにしてくれるアーティストタイプなど、目的に応じて選ぶという方法もあります。そのほかに、参加者のコーディネーションからセッション当日のホスピタリティまで、プロセス全体をケアする人、あるいは機能も必要になります。アウトプットをドキュメントや映像にするならば、ライターやエディター、ビデオクルーなども、必要に応じて見つけてくることが求められます。